連合ってなぜ野党共闘に執拗に反対してるの?と思った時に読む話

今週のメルマガの前半部の紹介です。
連合が、自らが支援する民進党に対し、共産党との野党共闘路線に踏み切らないよう繰り返し警告しています。報道に対するリプなんかをみると、連合の頑なさに相当フラストレーション溜め込んでいる人も多いようですね。

連合が衆院選方針の素案 民進・共産の協力を強くけん制


なぜ連合は共産党との共闘を嫌うのでしょうか。彼らは本音では何を考え、そして民進党には何を期待しているのでしょうか。労働市場の先行きを考える上でもよい素材になると思われるので、今回は連合のメカニズムについてまとめてみましょう。


連合のホンネ

連合というのは主に大企業の正社員たちで組織される労働組合の寄合です。様々な業種が含まれますが、やはり組合員数が多く歴史も長い大手製造業の影響力は強いです。経団連の対になる存在だとみていいでしょう。ちなみに現会長の神津さんは新日鐵、先代の古賀さんは松下電器、先々代の高木さんは旭化成労組の出身です。

“労働組合”といっても高年収企業の正社員中心なので、そこらの野良ユニオンなんかとはまったく毛色が違います。筆者がよく言うところの「二階建て労働市場の二階で暮らす人たち」であり、文字通りの終身雇用が保証されるエリートです。

さて、筆者はなんだかんだ言いつつ連合の人と年に数回は仕事しますけど、だいたい以下のような本音を吐露してくれますね。

「消費税はとっとと上げてほしい」

意外と知らない人が多いんですが、国民年金の未納分は、厚生年金にツケがまわされています。他にもいろいろと社会保障関係で入用な分はサラリーマンの各種保険料から天引きされ続けています。最近も介護保険料の計算方法を見直して大企業の正社員の天引きが増えましたね。

【参考リンク】介護保険料の負担増 来年8月実施を検討 大企業社員ら


なぜか?消費税だと民意を問わないといけませんが、保険料だと税じゃないから政府内でちょろっと数字を書き換えるだけで済むからです。まあ実態としてはサラリーマン税なんですけど。で、この20年ほど消費税上げる上げないでグダグダやってる間中、サラリーマンの天引きはスルスル上がり続けているわけです。まさに自営業者ウハウハです。

【参考リンク】サラリーマンが目先のベアより社会保障の抜本改革を要求すべき理由

あ、ちなみに↑は2年前の記事なんで、現在はもっと天引き増えてますね。消費税引き上げは延期したのに(苦笑)

この事実に対し、連合の中の人たちは腸煮えくり返ってます。もちろん毎年一兆円増加し続ける社会保障の見直しするのがベストなんですが、それはあまりにもハードルが高いです。

「だったらせめて高齢者やニートやフリーターからもとれる消費税にしろよ。なんでボクらの保険料だけ一言の相談も無しにあがるんだよ。保険料っていうのは払った分見返りが増えるべきであって、取りやすいから取るってそれ税金だろ。だいたい消費税だったら工夫次第で節約も出来るけど天引きって工夫の余地ゼロじゃん」

と、まあだいたいこんな具合ですね。


「内部留保とか輸出戻し税にメスを入れろ?バカじゃないの(爆笑)」

階級闘争(笑)の大好きな左翼の皆さんの中には「大企業の内部留保を使えば賃上げも非正規の正社員化も可能だ」という意見が根強く存在します。あと、「大手の輸出企業は消費税から輸出戻し税として何百億円もこっそり還付されている」なんて言ってる人もいます(バカすぎてリンク張るの面倒なんで興味ある人は『内部留保課税』とか『輸出戻し税』でググってください、陰謀脳の方のゴミみたいなブログ記事がいっぱいヒットしますんで)。

まあ今更言うまでもないことですが、内部留保は現金じゃないし、そもそも株主のものだから手突っ込んじゃいけないし、(海外の客から消費税取れない)輸出企業が仕入れ段階で支払った消費税分を還付されるのは当然なんですけど、世の中には本気にしちゃってる痛い人が結構います。で、当然ながら連合の中の人はバカにしまくっています。

「内部留保といってもだいたい設備投資だしキャッシュがあってもそれは不況時にボクたちの雇用を守るための備えなんだから非正規に分配できるわけないだろ。消費税は大企業優遇?バカじゃないの(笑)」



「賃上げ賃上げって外野がちょっかい出すんじゃないよ」

安倍政権は政権成立以来、うるさいほど春闘での賃上げを強力にプッシュしつづけています。その姿は昔の社会党以上です。でも、連合からすれば、はっきりいって余計なお世話です。

賃金というのは上げれば済む話ではなく、組合員の雇用を守りつつ、その水準をこの先10年20年維持できるかどうか、労使で知恵を絞って水準を決めているわけです。会社の売上動向はどうか、日本経済の先行きはどうか、そして人口はどうなっていくか。

国がやるべきは規制緩和や構造改革でそうした日本経済の先行きとか人口を上向かせて企業の先行きを明るくすることであって、「あのさあ、なんか日銀にいろいろやらせてもぜんぜんデフレ脱却できないから、とりあえず賃上げしてくんない?」って絡んでくるのは本末転倒なわけですよ。なので、やはり連合の中の人は安倍ちゃんにかなり怒ってます。

「賃上げ賃上げって知りもしないで余計なこと言うんじゃないよ。ボクらが仕事してないみたいに見えるじゃん。ていうか構造改革まったくやってないのは政府の方だろ!下手に賃上げしすぎたら後でリストラされるのはボクたちなんだよ!なんでボクらが政府の尻拭いのためにリスクとらないといけないんだよ!」



「格差是正とか同一労働同一賃金はほどほどにしといてよ」


最近になってようやく過労死のような正社員内の問題もフォーカスされるようになりましたが、今まで雇用問題というと「正規と非正規雇用の格差」が中心でした。これに対する連合のスタンスはとてもシンプルなもので、一言でいえば「非正規雇用を正社員化させろ」です。

世界で最も解雇の難しい日本の正社員が安定していられるのは、比較的解雇の容易な派遣社員などの非正規雇用労働者がたまよけになってくれるからです。実際、リーマンショック時のような時に、非正規雇用をばっさばっさ雇い止めにすることで、彼ら大手の正社員は雇用が守られたわけです。逆に言えば、労組的には非正規雇用がなくなっちゃうと非常に困るわけです。自分たちが直接被弾するわけですから。

同一労働同一賃金もそうですね。総額でどれだけ人件費が用意できるかは事業内容で決まっているわけで、本気で同一労働同一賃金なんて実現されたら間違いなく貰いすぎの正社員の賃金は下がるわけです。今までのように正規と非正規の間に高い壁作って競争原理が働かない状態にしておく方がメリット大なわけです。

なるほど、確かに全員正社員にしちゃえば格差はなくなるし、同一労働同一賃金も実現するでしょう。なにより、「みんなで正社員」というフレーズはとても分かりやすく美しい響きです。「労働市場を流動化して、職能給から職務給にしたうえで……」とか言ってもわかる人は少ないですけど、全員正社員化なら田舎の爺ちゃん婆ちゃんにも拍手してもらえます。

そして、もっとも「全員正社員化作戦」が魅力的なのは、それが絶対に実現不可能な点です。覚えておいてください。響きが美しく、絶対に実現不可能な政策というのは、既得権を持つ側にとっては実に美味しい政策なんです。彼らの目的は解決ではなく現状維持ですから。

そうそう、旧・民主党は政権時代に派遣規制強化をやって派遣労働者を40万人減らし、失業者とパートを増やしたという輝かしい戦果を挙げています。まさに連合の本音に沿った作戦と言っていいでしょう。

【参考リンク】民主党は派遣を規制して何かいいことあったんだっけ?


「正社員と非正規雇用労働者は連帯して、みんなが正社員になれる理想の社会を目指そうよ。あ、実現できなかったらそれは本人の努力不足か、経営者が悪いだけだからボクらは関係ないからね」




さて、野党の中には、上記のような連合の本音とは相いれない政党が一つありますね。消費税引き上げには「輸出戻し税があるせいで大企業優遇だ」といって一貫して反対、膨張する社会保障のカットにも反対で、大企業の内部留保を使って正規雇用化を主張する政党が。そう、それは共産党です。

狂ってるのか、それとも確信犯的に日本経済をぶっ壊そうとしているのかわかりませんけど、少なくとも共産党の人たちは本気で上記の政策を実行しようと考えています。はっきり言って、連合とは水と油の関係です。

そんな怖い怖い共産党オジサンから「(選挙では)協力しよう!勝ったら俺と一緒に(連立政権に)なってくれ!」という熱いプロポーズをされ「で、でも……」と優柔不断な乙女ばりに迷っている民進党を見て、連合は相当フラストレーションがたまっているというのが実情でしょう。

あ、もう一つ連合の本音を。彼らは別に民進党のセンセイがたなんて落選して無職になろうが野垂れ死にしようがぜーんぜん何とも思ってないですね。自分たちの役に立つなら支援してやるけど、使いもんにならないんだったらいつでもケツ持ち辞めるわ、くらいのスタンスです。




以降、
日本の労使対立はフィクションである
弱者は“和製トランプ”に期待しろ




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Q:「労働組合はどのように運用していくべきでしょうか?」
→A:「わからないことがあれば〇〇に相談すればOKです」




Q:「キュレーションサイトの白黒はどこで線引きすべきですか?」
→A:「筆者は線引きは必要ないと思います。でも組織的にやらかしたのならアウトでしょう」







雇用ニュースの深層


同一労働同一賃金、いいあんばいに骨抜きになる


とはいえ、政府の狙う落としどころははっきり見えてきました。




一昔前の自民党政治家みたいなことを言い出すトランプさん

想像してみてください、総理がトヨタに「海外に工場作るな、国内で作れ」と言ったら何が起こるか。






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なぜ東大って女子に人気ないの?と思った時に読む話

今週のメルマガの前半部の紹介です。先日、こんなニュースが話題となりました。

【参考リンク】東大、女子学生に家賃補助支給へ

東大は女子比率が20%という大変男くさい大学なので、何とかその比率を引き上げるのが狙いだそうです。案の定、「男女差別じゃないか」とか「ほかにやることないのか」とか諸方面から叩かれまくっていますが。

ところで、そもそもどうして東大ブランドは女子に魅力がないんでしょうか?そこを紐解いていくと、個人と組織にとって本当に必要な改革が見えてきます。


総合職カルチャーの頂点に君臨してきた東大


東大に入る最大のメリットとは何か。それは「大企業や中央省庁といった日本型長期安定雇用のレールに乗りやすい」ということです。総合商社とかメガバンク、自動車、鉄鋼、そして電通etc……

そういう誰でも知っている有名な大企業に新卒カードを使って入社しようとするなら、“東大”という学歴は無類の強さを発揮してくれます。

一方、やはり就職先として人気のある外資系の高年収職(コンサル、金融機関等)は基本的にポテンシャル採用はしないので東大だからというだけで下駄を履かしてくれることはまずありません。あと近年はそうした外資は理系修士以上の採用が増えていて、東大といっても文系学部生だと普通に落とされる人が多いです。新興企業はどうかといえば、こちらは特に特定の大学が好きというのはなくて、能力と熱意のある人材に広く門戸を開いています。

というわけで、実際、東大生の多くは大企業や官庁に就職することになります。

【参考リンク】東大の15年度就職状況、上位顔ぶれ変わらず


それから、彼らはどういうキャリアをたどるのか。まず、どんな仕事を担当するか、勤務地はどこかといった決定権はすべて会社に預けます。残業しろと言われれば徹夜でも何でもしなきゃならないし、有給もせいぜい5割消化と言ったところでしょう。要するに裁量は少ないです。

給料も大手だからと言ってそんなに多いわけではないです。初任給段階では、他の中小企業と大して変わりはありません(むしろ中小の方が高かったりすることも)。そこからじりじり勤続年数と共に上がっていって、部長ポストまでいってようやく1000~1500万といったところでしょう。

ただし、リスクは非常に少なく抑えられます。普通に働いていればクビになることはまずないし、仕事できなくても45歳くらいまではジリジリ昇給させてくれます。たまに経営危機になったりする大企業もありますけど大手だと国が税金突っ込んで救済してくれます。

合コンでも会社名だけでモテるしローンも組み放題です。まとめると、裁量を会社に預けるかわりに、全力で守ってもらえる身分の一員として生きることになります。筆者はそういう慣習を“総合職カルチャー”と呼んでいますが、東大というのは、総合職カルチャーの頂点に位置する大学といっていいでしょう。

ただし、総合職カルチャーには大きな問題があります。それは、純然たる男社会だという点です。家庭内で誰かが長時間残業や全国転勤しなきゃならないなら、別の誰かが家庭に入ってサポートする側に回る必要があります。そして、企業はその役割を“専業主婦”という形で女性に押し付けてきたわけです。

たまに「専業主婦は日本の伝統」みたいなこと言ってる痛いオジサンがいますけど、戦後の高度成長期に一般化した割と最近の流行りもんですね。東大の上野千鶴子先生なんかは専業主婦のことを「社畜の専属家政婦」なんてズバリ言い切ってます。

【参考リンク】『上野先生、勝手に死なれちゃ困ります』


つまり、女性からするとこんな感じです。青春犠牲にして受験勉強頑張って晴れて東大に入学しました、就活も頑張って有名大企業に入りました、でも職場はすごい男社会でぶっ倒れるまで残業させられました、結婚するとそれとなく上司に肩を叩かれました、出産時には露骨に肩を叩かれました、何とか復職できましたが出世の芽は完全になくなりました……

結果、日本の日本の男女平等ランキングはどえらいことになってるわけです。

【参考リンク】男女平等ランキング、日本は過去最低111位


言っちゃなんですけど、↑な状況で「月3万出すから、一生懸命勉強して東大おいで!」と言われても焼け石に水なんじゃないですかね(苦笑)

もし筆者に娘がいて、「もう一年頑張って東大行きたい!」って言ったら「どうしても東大じゃなきゃできないことがあるならいいけど、そうじゃなきゃその辺の女子大でいいんじゃね?女子で東大行ってもあんましいいことないから」ってアドバイスすると思いますけどね。




以降、
公立校復権が示す、東大の本当の危機
日本型組織での女性のキャリアデザイン


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Q:「ローテーションで自分のキャリアの方向性が見えなくなってきました……」

→A:「“伸びしろ”という観点でもう一度チェックしてみてください」




Q:「残業代が100%出るようになったんですが基本給が減りました」
→A:「木の実を朝4つもらえるかわりに夜の分が3つになったわけです」








雇用ニュースの深層

ロイヤルホスト、24時間営業廃止へ 


5年くらい前から「壮絶な人手不足時代が来る!」と言ってサービス業ではあの手この手で働き手の囲い込みをやってきたわけですが、多分抜本的なビジネスモデルの見直しにも手を付けねばならんだろうと予想されておりました。いよいよその第一弾というわけです。

この動きにはさらに先があると筆者は予想しています。



電通、鬼十則を削除へ

ていうか今まで削除してなかったのが驚きです。自分のPRはイマイチですね。






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第3回 NPO全世代フォーラム登壇のお知らせ

11月19日(土)13時より、以下のシンポジウムに登壇予定なのでお知らせ。


第3回 NPO全世代フォーラム 【共催:早稲田大学アジア太平洋研究センター】
日本を解き放つ、3つのトリガー
〜停滞を打破すれば、日本は必ず動き出す〜



数日前になるけどまだお題を詰めてなかったりリンク先の詳細が404になってたりと
かなりドタバタなんですけどこういう時に限ってすんごい面白くなるので期待大だね。

特にがっついた早稲田パーソンは必見!



以下のクラウドファンディングもご参考までに。
【待機児童問題】クラウドファンディング開始のお知らせ


なぜ日本人はやりがいもないのに長時間労働で低賃金な仕事を我慢するのか

今週のメルマガの前半部の紹介です。先日、こんな国際比較が話題となりました。

日本のソフト技術者、労働時間は最も長く、やりがいは最下位 国際比較


まとめると「日本人労働者は相対的に労働時間が長く、賃金は低く、仕事にやりがいを感じていない」ということです。ソフトエンジニアに限らず、国際的に見た日本人の長時間労働や低生産性、仕事嫌いは割と有名な話ですが、こうして全部並べて比較されるとなかなか壮観です。

普通、仕事はきついけど高賃金とかやりがいはあるとか、なにかしら一つくらい売りがあるものですけど、全部負けてるってある意味で凄いですね。なんだか昔の共産圏みたいです。

なぜ、日本の労働環境は長所が一つもないんでしょうか。そして、現状の枠組みの中でそれらを改善する余地はないのでしょうか。キャリアを考える上で非常に重要なポイントなので、まとめておきましょう。


“三無い職場”の作り方

筆者は以前から(長時間残業が慢性化しており)時間的余裕がない、給料も高くない、やりがいもない、というような職場を“三無い職場”と呼んでいます。なぜこんな職場が先進国の日本に存在しているんでしょうか。

ここは発想を変えて、人を採用する企業の立場になって考えるとわかりやすいです。あなたが新しく作った会社の人事部長だとしましょう。日本の法律判例を守りつつ、これから新たに人を雇って会社を回していかないといけません。

さて、とりあえず日本には終身雇用という暗黙のルールがあり、一度人を雇うと会社が倒産寸前に追い込まれるまで解雇は難しいという現実があります(ちなみに一度倒産したJALはその時クビにした従業員と最高裁まで争ってるので、大手だと倒産しても解雇はダメ、となる可能性すらあります)。

なので、あなたは会社を回すのに最低限必要な人数をさらに下回るくらいの採用数に抑えておく必要があります。たとえば従業員100人必要な仕事量なら採用数70人くらいのイメージです。そして、労働力の不足分は残業で対応することになります。そうしておけば、多少暇になっても残業減らすだけで調整できるので雇用は守れるわけです。

国も36協定という抜け穴を作ってくれているので、労組と協定結んで月150時間くらい残業可能なようにしておけば問題ありませんね。労組も自分たちの雇用を守るためなので喜んで協力してくれるでしょう。余談ですけど、ちょうど先日、電通に強制捜査が入ったことが話題となりましたが、あれはこうした手続きに不備があった点が問題視されているだけであって、長時間労働時間そのものが問題視されているわけではないので安心してください。

次に賃金ですが、以下の2つの理由から出来るだけ低い水準に抑えておく必要があります。まず、65歳までという超長期間の雇用を保証するため、それまでに起こり得るリスクを織り込んでおく必要があります。具体的に言うと、二度や三度くらいの経営危機はあるでしょうけど、そうなっても毎月給料支払えるだけの水準をキープしておくわけです。

2つ目の理由は、時給で払わないといけないから、です。販売員や工場の製造ラインと違い、ホワイトカラーは労働時間に応じて成果が上がるわけではありません。実際、明るいうちはくっちゃべったりSNSやりまくった挙句「夕方から本気出す」みたいなオジサンは掃いて捨てるほどいます。そういう人にもきっちり残業代を支払ってあげるために、あなたがすべきことはただ一つ。基本給をうんと低く抑えておくことですね。要はトータルでの人件費を一定に維持するわけです。

余談ですけど、最近、政権が企業に賃上げしろしろうるさく言ってますが、65歳雇用義務化や社会保険料の引き上げをさんざんやっといて(実質的に人件費は大幅に上がってるのに)これ以上は上がるわけないだろうというのが労使の本音ですね。まあそれ言っちゃうと「じゃあ解雇規制緩和したら賃金上がるんだね?」と返されるので連合なんかは口が裂けても言いませんけど。

最後に、やりがいについて。会社内には内勤から営業、企画までいろいろな職種が存在します。それぞれに秀でた人材を必要に応じて労働市場からリクルートしてくるのが最も合理的ですが、残念ながら終身雇用のわが国ではそういうキャッチ&リリース方式は実現困難です。

そこで、社内の余ってる人を人手不足の現場にローテーションすることで対応するしかありません。「私はかくかくしかじかの仕事がしたいです」って言ってる奴の話をガン無視して会社都合でがんがん使いまわすわけです。もちろん全国転勤もセットです。

まとめると、あなたが会社を回すためにしなければならないこととは、一定の残業を前提に必要最小限の人員を確保しつつ、基本給は出来るだけ低く抑え、将棋の駒のごとくぽんぽんローテーションさせて使い倒すことです。新卒一括採用で自社特化型人材にじっくり育てると、逃げられにくいから定着率もばっちりです。

というわけで、あなたの作った会社は一見すると奇妙に安定して見えますけど、匿名でアンケートでもとってみるとボロ糞に書かれる立派な“三無い職場”と化していることでしょう。



以降、
本来、効率的な働き方と高給とやりがいは矛盾しない
現状の枠組みで3兎を追求するテクニック



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Q:「TOEIC導入の本当の狙いって年功序列の見直しでは?」
→A:「まあ上がり待ちの人をあぶりだすリトマス紙的な意味はありますね」



Q:「この際、電通にはきついペナルティを与えるべきでは?」
→A:「別に電通社長をムショにぶち込んでもいいですけど、状況は何にも変わらない、というかむしろ悪化すると思います」







雇用ニュースの深層

過労死に対する労組の本音

「人より雇用を守る」システムから「雇用より人を守る」システムに移行してしまうと労組のオッチャン的にはとても困るわけです。



テレワークがいまいち浸透しないわけ

タブレットやセキュリティより重要なのは、成果で評価する評価制度と、それを賃金に反映させる賃金制度です。








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国が“氷河期世代”をなんとかしようと言い出した時に読む話

今週のメルマガの前半部の紹介です。先日、こんなニュースが話題となりました。

厚労省、氷河期世代の正社員化後押し 企業に助成金

従来もトライアル雇用制度やジョブカード制度といった非正規雇用の正社員化支援制度はいくつかありましたが、特定の世代を全国レベルで支援というのは恐らく初の試みだと思われます。

とりあえずその世代にしわ寄せがいってしまっている事実を認めたという点で評価してもいいんじゃないでしょうか。10年くらい前には「ロスジェネなんて幻想、単に本人たちの努力不足なだけ」なんて言っちゃってる人も結構いましたからね。

ただ、いまや40代となった彼らを正社員に押し上げるのは、そうたやすいことではないでしょう。むしろ、無理に正社員にこだわることで人生の選択肢が狭まることにもなりかねません。というわけで今回は、ムリヤリな正社員化で何が起こるか、そして個人で生き残るために何をなすべきかをまとめましょう。

氷河期世代の正社員化で起きること

まず、日本の労働環境のおさらいをしておきましょう。筆者が常々言っているように、日本の労働市場というのは文字通りの終身雇用・年功序列が保証される2階と、そういうのは名ばかりの1階からなる二階建て構造となっています。2階は大企業や公務員、1階は中小零細企業が中心です。

終身雇用なんかは2階にしかないわけですが、当然ながら両者には共通ルールが適用されるわけで、いろいろとおかしなことになっています。たとえば終身雇用を守らせるために(調整手段として)残業青天井が認められているわけですが、1階からすればメリットなんてないのに青天井で働かされるわけです。あと、終身雇用だから金銭解雇ルールなんて明文化されてないわけですが、逆に言うと1階からすればロクな金銭保証もなしにクビになったりするわけです。

さて、2階と1階のもっとも大きな違いは何かというと、定着率です。たとえば電通みたいな我が国が世界に誇る超優良企業だと「取り組んだら放すな、殺されても放すな」レベルの殿様マネジメントでも耐えるメリットは大きいので社員は歯を食いしばって耐えてくれます。なので2階の定着率はとても高く、新卒だと3年内離職率はだいたい10%くらいです。

一方、これが1階だとそんな無茶ぶりされたら我慢するメリットなんてないから従業員はさくっと逃げ出します。「俺たちの若いころはワンオペなんて普通だったぞ」と言って殿様マネジメントしようとしたら従業員が大量流出して営業自粛に追い込まれたすき家なんかが典型です。業種にもよりますけど新規採用者が1年で半分辞めるような企業は1階では珍しくないですね。

この辺の構造的事情がよくわかってない人には電通の鬼十則なんかを本気で有難がっちゃう痛い人もいますが、同社はマネジメントのレベル的にはすき家と同じレベルですね、はい。

さて、こうした構造を踏まえた上で政府が金ジャブジャブ突っ込んで正社員化を後押しすると何が起こるでしょうか。それは以下の3点です。

1. 離職率の高い1階の企業に金がジャブジャブ流れる

筆者の感覚で言うと、残念ながら2階の企業が氷河期世代を新たに正社員として雇用することは考えづらいです。年功賃金がかっちり機能していて年齢に見合わない職歴の人は採用したがらないためです。

そこでそうした人たちを採用するのは1階の企業が中心となりますが、先述のように1階には100人採っても1年後には半分も残っていないような企業が珍しくないです。中には最初から長期雇用するつもりなんてなくて文字通り使い捨てにしている企業もあります。そういう会社に採用者一人に月数十万円をポンと渡してあげるわけですから、彼らは大喜びで採用活動&新陳代謝に精進することでしょう。

長期安定雇用を目指して導入したはずが、もともと流動性の高い一部の企業の新陳代謝をさらに刺激するというたいへん微妙なオチになるわけですね。

2. 天引きが増える

たとえば現在はフリーターで月16260円の国民年金保険料を払っている人は、正社員となって厚生年金に加入すれば企業負担分も合わせて約18%ほど徴収されるわけです(“企業負担分”となっていますが会社から見れば全部ひっくるめて人件費なので実質本人負担)。

「将来のために貯金をしているようなものだからそれでいいじゃないか」という考えもわかります。でも、こんなこと言ってる人達に、今の生活を切り詰めてねん出したお金を預けるのが本当に“貯金”になるんでしょうか。

実際、専門性が高く会社と交渉できる人材の中では、厚生年金から国民年金へ流出する動きがすでに起きています。そうした流れに逆行するメリットは筆者にはわかりません。

3. たいして安定しないしワークライフバランスは悪くなる

そして、一番重要なポイントはこれです。そもそも終身雇用なんてあるのかないのかわからないような1階の会社に“正社員”として雇わせる意味がどれほどあるのか、ということです。

筆者のお付き合いのある中小企業さんもそうですけど、そういう会社はあまりに人手不足なので新卒一括採用なんてそもそもなくて、年間通じて正社員募集中です。オッチャンはもちろんオバチャンや高齢者も活躍してるほどダイバーシティもお盛んです。働いてる側も雇ってる側も「終身雇用?なにそれ?」くらいのもんです。そういう会社に補助金付きで正規雇用させることにどれほどのメリットがあるのか、筆者には正直わかりませんね。

ただ、メリットは見えなくてもデメリットは確実にあります。上記のようにたとえ終身雇用という果実がなくとも、長時間残業などの滅私奉公は受け入れないといけません。なので確実にワークライフバランスは悪化することになります。

たとえば派遣社員はマネジメントを派遣元企業が行っているため一切ごまかしがききません。なので「派遣さんは定時で上がってもらって。残った仕事は社員が引き継いでね」といってサビ残させる会社は普通にあります。このサビ残させられる側にあえて入っていくわけです。

確かに、氷河期世代の非正規雇用比率は高いし、一方で正社員の働き手を欲しがっている企業があるのも事実です。一見するとミスマッチに見えるので、政府がお金を出してこのミスマッチを解消してあげればみんなハッピーになれるような気がしないでもありません。

でも、現状がそうなのにはちゃんと理由があり、正社員を増やしてもっと天引きを増やしたいからといった理由で流れを変えようとしても、働き手の満足度アップにはつながらないだろうというのが筆者のスタンスです。



以降、
氷河期世代が目指すべきは正社員より……
正社員への就職を促すためのセミナー(笑)内容を予想しよう







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Q:「1年目でフレックス勤務って無理がありますよね?」
→A:「新人は育てるものか、自分で育つべきものかが問われます」



Q:「同世代の大きな政府志向が心配です……」
→A:「延々とバラマキとか金融政策の話ばかりする奴はだいたい無職なので無視しといていいです」






雇用ニュースの深層


やっぱり成長戦略の柱は労働市場流動化できまり!


独「うちはこれで上手くいきました」
仏「うちんとこも今それやろうと頑張ってます」
日「じゃあうちもうちも」




日本の終身雇用制度は世界からどう見られているか
 
はっきり言うと「労働者思いの制度」なんて思ってる人は一人もいなくて「なんでそんな非効率なこと続けてんの?バカなの?」くらいの目で見られてます、はい。





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著作
「10年後失業」に備えるためにいま読んでおきたい話


それゆけ!連合ユニオンズ[上]


若者を殺すのは誰か?


7割は課長にさえなれません


世代間格差ってなんだ


たった1%の賃下げが99%を幸せにする


3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代


若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
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城繁幸
コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
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