未払い残業代を後からみんなで請求したらどうなるか

面白い記事を見つけたので紹介。

「サービス残業肯定論」は1ミリも通用しない 不払い分は退職後でもきっちり請求しよう

ふむふむ、なるほど、法律家ってこういうロジックで考えてるのか。筆者自身も“精神論”は大嫌いなので内容にそんなに異論はないのだが、現実が彼らのロジック通りに動くとは限らない。良い機会なので、ビジネスの現場がどういう風に動くかについてまとめておこう。

1.退職者の請求した残業代を払うのは残った従業員たち

ちょうどタイミングよく維新の足立衆院議員が問題提起してくれているので、このケースに乗っかって説明しよう。

まあ中にはオーナー経営者ががっつりため込んで従業員は全員サビ残でへとへとというケースもあるのかもしれないが、普通の企業では、事業環境で既に人件費として用意できる総額が決まっている。議員でいうと、国からいくら支給されて献金がいくらあって、その中で政策研究や政治活動にいくら使って、最終的に秘書やスタッフ達に支払える人件費は限られる。国に「もっとちょうだい」とも、業者に「ちょっとまけてくれ」とも言えない。

だから、後から退職者に「あと〇百万円払ってね」と言われたら、残りの人件費から払うしかない。たぶん他の私設秘書さんやスタッフのボーナスやら基本給やらをカットして帳尻を合わせるんだろう。だから、この手の訴訟を労組は支援するどころか、すごく嫌な顔をする。彼らは元組合員が勝利した場合、自分たちの取り分が減るとわかっているからだ。

これは特殊なことでも何でもなく、以前から口を酸っぱくして言っているように、チンタラ残業しているダメ社員の残業代はみんなの財布から出ているのと同じこと。在職時に払うか、辞めた後で一括請求するかの違いでしかない。

というわけで、元同僚が未払い残業代を請求してきたら、みんなも頑張って払ってね♪


2.結果的に、みんなの基本給は下がり、残業しないと生きていけなくなる

仮に今回の残業代請求が認められ、かつ「国会議員でサービス残業なんてけしからん!」的な世論が盛り上がってしまうと、議員センセイたちは何らかの対策をとるしかない。そして、議員秘書なんていう「かならずしも時間と成果が比例するわけでもない仕事」で残業やったらやった分だけばっちり手当を支払う方法は一つしかない。それはだいたい平均でこれくらい残業やってるな、という時間を計算し、その残業代コスト分をあらかじめ引いた金額に給与水準を引き下げることだ。

要するに、これまで月50万円貰って月50時間サービス残業していた人に、月30万円の基本給と月20万円の残業代を払うという話。

同じじゃん、という人はよく考えてみよう。以前なら別に早く仕事が終わった月は早く帰っても50万円もらえたものが、これからは早く帰ると損をすることになる。ついでに言うと、月100時間残業知るのが趣味という残業バカは一気に手取りが増えるが、その増えた分は、効率よく定時に終わらせていた人からのプレゼントだ。恐らく、後者もこれからは効率なんて度外視して、一生懸命残業に精を出すはず。「残業代は長時間残業を抑制する」のではなく、「残業代こそが長時間残業を助長する」わけだ。

クレサラ問題がだいぶ片付いたため、この未払い残業代問題は、弁護士センセイ方の新たな金脈として熱い視線を集めている。たぶんこれからこうした退職者による未払い残業代問題は中小企業でも頻発し、ザルだった労務管理を(上記のようなアプローチで)きっちりメンテする企業が増えるだろう。というわけで、運良く(運悪く?)自分の会社がそうなっちゃいましたという人は、もう家族サービスとか趣味とか全部忘れていいから、頑張って残業道をきわめてくださいね♪


3.未払い残業代を勝ち取ったとしても、必ずしも幸せにはなれない

さて、まとまった金は手に入るし、元の会社にはギャフンと言わせてやれるし、元同僚なんて知ったこっちゃないしで、未払い残業代請求というのは、退職者にとっては夢のようなプランに映るかもしれない。でも、個人的にはおススメはしない。なぜか?それは一言でいうなら企業側との決定的な信頼関係の毀損であり、そういうことをしてしまうと今後のキャリアに重大な悪影響が及ぶからだ。

もちろん、中には、強欲なオーナーが何年にもわたって社員をタダ働きさせているようなケースもあるのかもしれないし、そういう場合はもちろん訴えてしかるべきだ(筆者は見たことないけど)。

ただ、それなりの期間、サービス残業を継続したということは、そこには(経営的に余裕がない、あるいは「この仕事は成果が時間に比例しないからしょうがない」といった)一種の信頼関係が存在したわけで、後から「やっぱりさかのぼって全部払ってね」というのは背後から不意打ちかますようなものだろう。筆者の感覚でいうと、採用担当者の99%はそういう人を採ることにリスクを感じるはずだ。

「前職とのもめ事なんてわからないだろう」と思う人もいるだろうが、同じ業界であれば何らかの話は伝わるものだし、今でも企業によっては応募者の情報を前職にコンタクトして確認するところもある。たとえば今回の議員秘書殿を雇用したいという議員さんは与野党問わずいないだろう。何年の秘書キャリアがあるのか知らないが、それをチャラにしたわけだ。

もちろん、労基法や判例を100%守ってると自信をもって言い切れるような会社なら「まあひどい!サービス残業なんて都市伝説かと思ってましたよ」と行って快く採用してくれることだろう。でも筆者はそういう会社は見たことも聞いたこともない。

偉い弁護士センセイがおっしゃるんだから、きっと法的には正しいんだろう。やりたければいくらでも会社を訴えるといい。でもその結果、元同僚の手取りは減って、長時間残業は慢性化して、自分の再就職の選択肢は狭まるという事実だけは覚えておいた方がいい。儲かるのは弁護士のセンセイだけである。



※本気で長時間残業や過労死を減らしたかったら、時給管理を外しつつ残業時間に上限を付ければ済む話。「長時間残業や過労死をなくせ」と普段声高に主張している一部の労働弁護士のセンセイ方が、どう考えてもムリのあるホワイトカラーの時給管理になぜに固執しているのか、筆者は理解に苦しむ。









就活解禁になっても何やっていいのかわからない時に読む話

今週のメルマガの前半部の紹介です。3月になって、いよいよ就職活動が解禁となりました。いわゆる就活後ろ倒しというもので、今年から3月:セミナー等のコンタクト解禁→8月:選考開始で内定もOKという短いスパンでの就活がスタートします。

これといった縛りの無かった従来なら、3年の秋くらいからあちこち企業説明会に顔を出すなりOB訪問するなりして4年の秋口くらいまでのんびりやれたものを、3月接触開始8月以降内定と5か月の間にぎゅっと濃縮するわけですから、確かに採る方も採られる方も結構キツキツですね。合間にインターンまでやらないといけないわけですから、死にかけてる人事担当の知り合いも結構います。

本来なら、なにかしら将来像なりキャリアビジョンなりある人が進学して、そのための素養を磨くのが高等教育機関なわけで、磨いてきたものを使って普通に就活すればいいだけのこと。今さらあたふたする必要などないはずです。でも、筆者も野暮なことは言いません。恐らく過半数の人は「いきなりやれって言われても右も左もわからないし、全部の業界見て回ってる時間なんてない!」状態のはず。

そこで今回は、この3月まで放置プレイで突然スターティングゲート前に並んでしまった人が「入学直後から明確にビジョンを持ってそのために時間も金も割り振ってきたサラブレッド」に今から太刀打ちできるような就活プロセスをまとめたいと思います。

「育成のプロセス」を知れば、やるべきことは見えてくる

世界には、2種類の就職があります。一つは、ある特定の職に対して雇用契約を結ぶもので、当然、応募者はその職務がこなせるだけのスキルなり職歴があるかどうかで判断されます。こちらが世界標準で、日本でも非正規雇用や現場系の職人さんはだいたいこちらですね。

一方、その会社の正社員という身分に応募するという雇用契約もあります。こちらは組織の一員として言われた勤務地で言われた仕事を徹夜でも何でもしてこなすことが要求されます。なので、何か特定のスキルというよりも、組織のために粉骨砕身がんばれるかどうかが重視される傾向があります。戦後の長い間、日本企業の多くはこちらの採用スタイルでした。

たとえば90年代前半までは、六大学以上の体育会系だったらたとえ成績が落第寸前でも「はい!なんでもやります」と元気よく答えておくだけで、たいていの上場企業には内定がもらえたものです。筆者の先輩にボート部で3留して面接で「はい!わかりました!」しか言わなかった人がいましたけど、普通に商社受かってましたね。たぶん地頭的に悪くないにもかかわらず7年間なんの疑問も抱かずにボート漕いでたMっ気が入社後も大いに役立つと評価されたんでしょう。

とはいえ、いまどきそんなノリで内定がもらえる会社はほとんどないでしょう。応募者はエントリーシートや面接で繰り返し自らのキャリアデザインとそのためにしてきた自己投資を述べねばなりません。そう、日本社会全体が緩やかに、何でもやる根性重視の身分制度型から、特定の職種に絞ったスペシャリスト型に移行しつつあるわけです。いわゆる「意識が高い人たち」というのはそういう波になんとか乗ろうとしている人たちなわけです。

では、3月時点で、そうした波にぜんぜん乗れてないよという人たちはもう手遅れなんでしょうか?「いやあ、今までバイトとゲームとサークルしかやってこなくて、いきなり就活やれって言われて困ってるんです」という人は、トロール網よろしく100社以上エントリーしまくってなんとか引っかかってくれた会社に「何でもやります、いや、やらせてください」と頭を下げるしかないんでしょうか?

いえいえ、勝負はこれからです。先に、社会は緩やかに脱・身分制度型に舵を切っていると書きましたが、現場レベルではまだまだ変化に追いついておらず、実際は90年代とほとんど変わらない人材育成方式だったりする企業が珍しくありません。その育成プロセスを理解すれば、打つべき手は見えてくるはず。

従来型の育成スタイルでは、本人のなんとなくレベルの配属希望と人事部の判断を組み合わせてとりあえず大まかな配属を行います。なので、最初の3年間は割と流動的で、本人がどうしても納得しない、あるいは使ってみたけど適性が無いと事業部側で判断したような場合は異動、つまり実質的な再配属なんてこともありますね。

その後は、職場内で上から仕事を与えて少しずつ育成、30歳までに、組織の必要とするスキルを持った企業戦士に育て上げることになります。と書くと当たり前の話にも見えますが、実は、この過程ではもう一つ、スキル以外にも重要なモノを育て上げています。

それは“動機”です。自分は今のこの仕事で飯を食っていくんだというプロフェショナルとしての動機。それから、自分は今の業務にもっと習熟して上を目指したいという上昇の動機、あるいはその経験を活かして組織全体や社会を変えていきたいという改革者の動機。そうしたアグレッシブで前向きな動機は、新人の頃にはまったく見られなかったもの。それを最初の数年間で芽吹かせることが、日本型OJTのもう一つの狙いだったりします。

つきつめれば、職を重視するスペシャリスト型採用も何でもやる身分制度型採用も、目指すゴールは同じと言えるでしょう。「〇〇の仕事で頑張りたい」というコアな動機を入社前に持っているか、入社後にある程度幅広く経験させつつ、本人の適性と会社の都合を上手くすり合わせて与えるかの違いですね。

となれば、やるべきことはただ一つ。入社後数年かけて経験するであろう仕事の幅、それらの達成感、あるいは挫折感などを、これからの5か月で可能な限り先取りして吸収し、動機のひな形くらいは自分の中に作っておくことです。

もちろん、企業の形成する母集団に登録することも重要ですが、筆者なら合わせてOB訪問を重点的に行います。数は多くないですが、4年生向けのインターンも春、夏に行われているので、そういう機会を利用することも検討します。それらをうまく組み合わせることで、スキルと動機をまさに育てつつある先人たちの“息吹き”を自身も感じることが出来るは ず。

ここで重要なのは、あくまでも現場で働く人たちの生の声が必要だという点です。日本企業のインターンシップには、半日~数日レベル、それも研修施設などを使った“お客様インターン”が多くみられます。そういうのは何十回行っても、自己啓発本読んで「あ~なんかオレ成長したような気がするな」程度の満足感にしかなりません。

また、OB訪問も、企業側が組織して送り込んでくるリルクーターよりも、顔見知りの先輩や、キャリアセンターにある卒業生名簿などを使って自分でコンタクトをとったOBの方が価値があります。というのも、向こうからやってくるリクルーターは人事部がコミットしていて、テキパキこなれた対応はしてくれても、必ずしも本人の生の声を聞かせてくれるとは限らないからです(そういうのを後輩のために話してくれるリクルーターもいるので一概に否定はできませんが)。

まとめると、インターンでもOB訪問でも、とにかく実際に現場で働く人の空気を吸ってこいということですね。



以降、
100敗する奴には100敗する理由がある
OB訪問を有意義なものにするため聞くべき質問
筆者なら3月スタート直後はこう動く
就活サラブレッドの弱点




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Q:「本一冊ってどれくらいの時間で書けるもんでしょうか?」
→A:「半日しゃべるだけで一冊作る人もいますが、筆者はだいたい数か月です」



Q:「先日、女子プロレスラーが相手を半殺しにした件についてどう思いますか?」
→A:「前田日明の長州顔面蹴撃事件を思い出しました」






雇用ニュースの深層


女性議員の割合、日本は先進国で最低水準

女性の国会議員には弁護士や税理士といった士業が多いんですが、要は大企業が幹部候補としては採らないからですね。



シャープの3千人リストラが意味するもの

今回の同社のリストラは、通常のものとは違い、いくつか“タブー”を犯しています。


他。






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電波芸人的キャリア戦略を割と真面目に考察する

今週のメルマガの前半部の紹介です。先日、古賀茂明氏が報道ステーションを降板すると報じられ、大きな話題となりました。古賀さんといえば元経産省のエリート官僚で、退職後は大阪市の顧問を務めつつ、報ステなど各種メディアで積極的に情報発信していた人です。分かりやすく論理的な解説で、ポスト池上さんの呼び声もあったほど。いわゆる“脱藩官僚”の花形的存在だった人ですね。

その氏が、地上波ニュースでもっとも影響力が大きいと言われる報道ステーションを降板させられた理由とはいったい何でしょうか?調子に乗って「アイアム ノット アベ」と言って番組に味噌をつけてしまったことが原因でしょうか?確かにそれも一因でしょうが、その背景にはもっとホットで生々しい事情があるというのが筆者の見方です。

テレビや新聞と言った大手メディアに露出すれば、軽く数百万人に名前が売れることになります。それも、一日中PCに張り付いてる社畜やニートではなく、お茶の間でくつろいでいる専業主婦や高齢者といった時間的にも金銭的にも余裕のある層に認識されることになります。はっきりいってwebサイトで何十万pvなんて目じゃないほどのインパクトですね。もちろん知名度が上がるということは、それだけマネタイズもたやすいということです。

普段皆さんが目にしているメディアの裏舞台では、電波の上で生きていくことに血道を上げる電波芸人たちが、華やかなスポットライトの当たる場所を巡って、終わりの無い壮大な戦いを繰り広げているのです。まさに大河ドラマと言ってもいいでしょう。

そういうドラマの力関係を理解すれば、なぜ古賀氏は台頭し、急速に左旋回し、降板させられたのか、意外な構図が見えてくるはずです。もちろん、普段のニュースやワイドショーもより面白く楽しめるようになるでしょう。

電波芸人勢力図

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まず、現在、テレビや新聞と言った大手メディアの舞台でコメンテーターやら何やらとして活躍しているメジャークラスの方々を分類してみましょう。専門性と大衆迎合度という軸を設定すると、彼らは大きく分けて4種類に分類できます。ここでいう専門性とは、経済系の出版社から単著を出したり専門誌に寄稿するくらいのニーズがある人、大衆迎合度というのはポピュリスト的言説のようなものです。

1.これといって芸がない一方、大衆迎合度が高いゾーン

ここは一番の花形スポットであるとともに、一番の激戦区でもあります。誰でもふらっと入ってこられるんだから当然ですよね。ワイドショーやバラエティなのでおなじみの面々が顔をそろえます。

同時に、このゾーンは大衆迎合度の高いゾーンでもあります。「政府の借金は国民の資産」とかなぜか企業や個人の資産までぶっこんだ謎の「日本国のバランスシート」提唱で有名な三橋貴明や、「すべての問題は日銀に通ず」で女性問題評論家から一躍(リフレ派の)経済評論家に躍り出た勝間女史など、視聴者読者の皆さんは痛い思いをしなくてももっと豊かになれますよ的なコメントが売りの方々揃いです。宮崎哲弥、勝谷誠彦なんかもちゃっかりリフレ論に便乗してたりします。

なぜ彼らは大衆迎合的なんでしょうか。それは彼らには特にこれといった芸がないからです。宮崎哲弥とか勝谷誠彦に「高齢者向け社会保障をカットしろ」とか「痛みを伴う改革をとっとと推進しろ」とか言われたら誰だって「あんたに言われたかないよ」と思うでしょう。まして平日昼間にテレビの前に座っている視聴者にウケようと思ったら、そんなこと口が裂けても言えません。というわけで、こうした人々がメディアで食っていこうと思ったら、必然的に大衆迎合的にならざるをえないわけです。

最近のネット上ではバラマキ派とリフレ派が険悪なんですが、マーケティング対象がかぶっていると考えるとわかりやすいですね。

2.専門性を持ちつつ大衆迎合度も高いゾーン

一方、一定の専門性を持ちつつ、それを隠して大衆迎合的な意見に終始し、時にまったく本音とは真逆のことさえ平然と言ってのけるステキな方々もいます。政府の原子力委員会とワイドショーで180度真逆のことを平然と言ってのける武田邦彦、記者に「今日はなんて言えばいいの?」と聞くなど、業界初のオーダーメイドコメントシステムを確立した森永卓郎などが代表です。

よく「モリタクはただのアホだ」という人がいますが、筆者は非常に頭がいい人だと見ていますね。三和総研時代に「仕事出来る奴と出来ない奴が同じ給料なのはおかしい」といってゴリゴリの事業部別業績連動性を導入させた実績のある彼が、本気で社会主義の理念を抱いているとは到底思えないですし、まして“内部留保”が分配可能だなんて露ほども考えちゃいないでしょう。

彼らは別に悪気があって言ってるわけではなく「愚民が見たい夢を見せてやっているだけだ」くらいのスタンスだというのが筆者の見方ですね。

3.専門性はあるが大衆に興味が無いゾーン

それぞれ軸足となる専門性はあるけれども、別にそれでメディアに露出したいとか、まして大衆を喜ばせたいなんてことは毛ほども思っちゃいないグループです。というか、ごく一般的な大学の先生や研究者はここに該当するはずです(正確に言うとこのゾーンは“芸人”ではないですが)。

こういう人たちの中には「一般向けのメディアに露出するとむしろ専門ムラでの評価に障る」と考えている向きが少なからずあり、表舞台に出たがらない人も少なくないですね(筆者は、それはそれで問題だと思いますが)。

本来であれば、このゾーンから適時状況に応じて人材を呼んでしゃべらせれば、1番や2番の人材の出る幕なんてないわけですが、日本のメディアはなぜかこのゾーンの人材をあまり使いたがりません。

4.専門性はないけれども大衆迎合もしないゾーン

最後に、これといった専門性はないけれども大衆迎合的な芸も披露しないストイックな路線の人も少数ですが存在します。というか、筆者の知る限りそれはただ一人、池上彰だけです。見る人を圧倒する知識や経験があるわけでもないのに上からびしっと正論を吐けるのは、ひとえに氏の話術と存在感のたまものですね。これは真似しようとして出来るもんではないです。

とりあえず話は上手いけれども胡散臭いヤツや、ストイックな研究者だけど一般人にはチンプンカンプンな宇宙人タイプが居並ぶ中、バランスの取れた正論を一般人に通る言葉で話せる人材は池上さんくらいです。だから今のところ、池上さんの置き換えがきく人は見当たらないし、当面出てはこないでしょう。

さて、降板させられるまでの古賀茂明氏はどのゾーンに属していたのでしょうか?意外に思われるかもしれませんが、産業政策をぶいぶい言わせていた高度成長期ならいざ知らず、現在の経産省というのはすごくニッチな分野で政策通ではあっても(少なくとも一般視聴者に響くほどマスなレベルでは)幅広い専門性があるとは言い難いです。

実際、氏は震災後にメディア露出を増やす前に即席でエネルギー行政の知識を吸収し、滑り込み的にコメンテーターの椅子に座ったことからも、1番か4番ゾーンの人だというのは明らかでしょう。


【参照】古賀茂明氏がテレビから追放されたのは当たり前の話
では彼はいかにして詳しくもない原発問題について語るようになったかというと、東日本大震災が起きるとその直後にすでに役所を退職していた原子力分野の専門家の同僚に「原子力について教えてくれ、本を書きたいんだ」などとお願いしたことに始まるわけです。


ただし、氏が政策立案のプロフェッショナルであるエリート官僚であることは事実で、わざわざ電波芸人に軸足を置く必要などなかったはず。実際、経産省で左遷された後も公務員制度改革の事務方に抜擢されたり、経産省を追放されてからも大阪府の顧問を務めるなど、その手腕には一定の評価がされているのも事実です。電波上で媚びない正論を述べ続ければ、きっとまわりまわって本業の政策顧問としての評価につながるという正の循環が機能したはず。筆者は氏がポスト池上彰に成れた可能性は十分にあったとみています。

ではなぜ古賀さんは4番ゾーンに定着せず報ステレギュラーから転げ落ちてしまったのでしょうか?実は筆者は、電波芸人のパフォーマンスには専門性や大衆迎合度とは別に「社会や古巣に対するルサンチマン度」という重要な隠れ要素が影響しているとみています。これが高い人は、どんなに専門性が高くてもスポットライトの当たる表舞台から転げ落ちてアングラ世界に転落してしまうケースが多々あります。

そして、このルサンチマン度は、終身雇用型組織に勤める真面目な秀才タイプほど高く蓄積してしまう傾向があります。なぜか?普通のチャラチャラした人間であれば、ルサンチマンがたまる前に転職するか、在職し続けても適当に手を抜いてサボるのでルサンチマンとは無縁な人生を送ります。新橋で夜「会社はぜんぜんわかってねえんだよ」とくだ巻いてるオヤジはたいていこのパターンですね。

でも、真面目な秀才タイプは根が真面目な分、報われなくとも一生懸命に努力し続け、結果的に後戻りできない年齢に到達した時には、高濃度のルサンチマンを脳内に蓄積してしまうわけです。

恐らくは古賀さんも、古巣に対するルサンチマンを高濃度に蓄積してしまった一人でしょう。他に元官僚で古巣に対する怨念から暴走気味の人というと外務省OBの天木、孫崎コンビが真っ先に思い浮かびますが、彼らも元レバノン大使、元イラン大使という主流派からは程遠い微妙な経歴の持ち主で、さぞやルサンチマンを溜めまくっていることでしょう。この点、同じ外務OBでもノンキャリア出身の佐藤優はもともとルサンチマンなんてものとは無縁な分、しっかり2番ゾーンに根を張れているわけです。



以降、
既にあらわれていた氏の変調
メディアと電波芸人の相互依存
勝間和代はいかに群雄割拠の中原を制したか




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Q:「大企業の健康保険料引き上げに断固抗議したいです!」
→A:「サラリーマンは新橋でデモくらいやるべきです」



Q:「福祉レジーム論をどう思いますか?」
→A:「アングロサクソン型がいいって人に会ったことないですね」



Q:「健常者が障害者となった後のキャリアの描き方について教えて下さい」
→A:「会社によって全然違いますが、大手なら特に不利益はないでしょう」







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狭小邸宅



小説文庫版のあとがきを書かせてもらったので紹介しておこう。

事前情報なしで読み始めた当初、筆者は「よくあるブラック企業モノだな」と考えていた。主人公の働く不動産会社では、営業成績の悪い営業マンは容赦なく暴言や暴力に晒される。もともと営業向きではない主人公も例外ではなく、ついには露骨な退職勧奨の対象となってしまう。

ところが中盤、営業マンとして主人公が一皮むけた後は、社内での扱いはガラリと変わる。本人も社会人として成長し、ああこれは島耕作式のサラリーマン出世魚ストーリーなのかと思わせる。

でも、物語はそう単純な話ではない。終盤にかけて、恐らく組織人なら誰でも一度は逡巡するであろうテーマが徐々に輪郭を浮かび上がらせる。

何のために働くのか。

本書には、様々な答えを見い出した様々な社会人が登場する。単に日々の暮らしの糧を得るため。将来独立するため。中には、ただ数字の達成感が欲しいからという人までいる。

もちろん、そんな疑問は無視したまま、幸運にも身を置けたレールの上をただ進んでいくだけの人々も多い。でも、少なくとも主人公はそういうタイプの人間ではない。彼を辞めさせようとする上司の言葉は強烈だが本質を突いている。

「お前は特別でも何でもない、何かを成し遂げることはないし、何者にもならない」

特別でも何でもないんだったらなおのこと、何のためにどういう風に働くかは自分で決めるしかない。特別じゃない人のもとに、答えはけして向こうからはやってこないから。

下手なお客様インターンに行って時間をつぶすより、本書一冊読んだ方がはるかに得るものは多いだろう。もちろん、ちょうど現在、上記のテーマに直面しているという若手ビジネスマンにもおススメだ。






100万やそこらの献金問題でチクチクやりあってる暇があったら「かんぽの宿」の総括しろ

日本郵政が「かんぽの宿」の営業を8月いっぱいで取りやめるという。
もう忘れちゃってる人も多いだろうから、整理しておこう。

かんぽの宿というのは毎年40億円以上の赤字を垂れ流し続けてきた不採算事業で、2009年に郵政民営化の一環として、オリックス不動産に109億円で事業譲渡することが決まっていた。

それを2009年、「建設費で2000億円以上かかってる施設を109億円で売るのはかしからん!陰謀だ!」と、一部の頭の悪い政治家が煽ってチャラにした結果、その後も安定的に赤字を垂れ流し続けて「もうどうにもならないからやっぱり売却します、誰か買ってください」となったということだ。

築古でやすくなるのは当たり前の話だし、そもそも赤字事業としての売却(しかも従業員の雇用保障付き!)なんだから、むしろ買ってくれるだけ有難い話なのだが、一部のおバカな政治家の「有権者の皆さん、ボクちゃんたち一生懸命仕事してますよ」アピールのために少なくとも200億円以上は赤字が積みあがったわけだ。民営化されたと言っても現状では国が100%オーナーだから、国民の負担がそれだけ増えたということだ。

というわけで、とりあえず当時、仕事してますアピールのために日本郵政の西川社長を告発したセンセイ方の名前を書いておこう。

民主党:原口一博
元議員:川内博史、武内則男


社民党:又市征治
元議員:重野安正、近藤正道

元社民党議員で現・世田谷区長:保坂展人


元国民新党:亀井久興、自見庄三郎、長谷川憲正、森田高

維新 :松野頼久

自民党:鳩山邦夫



民主党とか社民党とか、ゴロゴロいますねぇ、こりゃ自民にとって格好の攻撃ターゲットになるじゃない、チマチマ数百万円の献金問題つつきあってる暇があったら200億どうケジメつけさせるか議論した方がいいに決まっている、よしすぐに反撃…って、アレ、鳩山邦夫センセイがいつのまにか自民党に復党してるじゃないか!おい、いい加減にしろ(怒)
















ENTRY ARCHIVE
著作
「10年後失業」に備えるためにいま読んでおきたい話


それゆけ!連合ユニオンズ[上]


若者を殺すのは誰か?


7割は課長にさえなれません


世代間格差ってなんだ


たった1%の賃下げが99%を幸せにする


3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代


若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
MY PROFILE
城繁幸
コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
castleoffortune@gmail.com
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