どうして左翼って人気ないの?と思った時に読む話

今週のメルマガの前半部の紹介です。
なんだか最近、左翼の元気がありません。なんだかんだ言われつつも安倍政権の支持率は独走状態な一方、民進党のそれは結党前より低下気味です。くわえて筆者が(ネタ的に)愛してやまない社民党も、解党した上での合流を民進党に打診するほどの落ちぶれっぷりです。たぶん党が消滅する前に寄合に入れて欲しいということなんでしょう(結局断られたそうですが)。

というわけで今回は“左翼”の面々について、いろいろと因縁のある筆者の視点からまとめてみたいと思います。なぜ、彼らは元気がないのか。そして、なぜあれだけ不人気だった旧・民主党は、それでもブラックホールのごとく弱小政党を惹きつけるのか。“左翼”なるものの構図を理解すれば、そのメカニズムがはっきり見えてくるはずです。

誰が“左翼”を必要としてきたのか

リベラルや左翼と聞くと、お金の無い人や社会的な弱者が熱心に支持しているとイメージする人が多いでしょうが、少なくとも日本の場合は全く逆です。旧・社会党や共産党の主な支持層は戦後ほぼ一貫して大企業や官公庁の労組であり、70年代以降に彼ら左翼が唯一支持率を伸ばしたのは資本階級です。

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(「格差」の戦後史  河出ブックスより)





と聞くと「そんなこと言われてもいまいち実感がわかない」と思う人もいるでしょうが、大企業に賃上げさせたり雇用を守らせたりすればするほど下請けや非正規がカツ上げされてどんどん貧乏になると言えばわかりやすいでしょう。最近だと某自動車メーカーが「ベアをやるので10%値下げお願いします」と労使でタッグを組んで下請けを回っていたのが記憶に新しいです。そういうことウン十年も続けて来たら、そりゃ支持層が大企業労組ばっかりになりますね。

まとめると、彼ら左翼は貧乏どころか、戦後ほぼ一貫して「平均よりかなり豊かな層」の代弁者としてやってきたわけです。これは非常に重要なポイントなのでしっかり押さえておいてください。

結果として、左翼的な論者に実際会ったり話を聞いてみると、だいたい以下の2パターンに分類できます。

1.お金儲けが大好きな人

まずは、お金儲けが大好きな人が凄く多いです。「左翼でお金なんて儲かるの?」と思った人は、先述のポイントをしっかり思い出してください。彼らは弱者のために発言しているのではなく「小金溜め込んでる層のためにサービスしている」と考えると、すごく効率的にマーケティングしているのがよくわかりますね。

たとえば「非正規雇用が可哀想だから、政府はもっと規制強化して正社員にさせろ」という内容の本でも書いてそこそこ売れれば、朝日とか毎日なら割と簡単にインタビュー載せてくれるのですぐに有名人になれます。もちろん労組もいっぱい講演会などを企画してテラ銭を投げてくれます。一方、非正規雇用労働者や失業者が正社員になるハードルはさらに高くなるわけですが、弱者をダシに小金持ちに営業かけるというのはそういうことです。

このタイプの代表は、やはりなんといってもモリタク先輩でしょう。派遣切りの際には某局で「企業の内部留保を使えばいくらでも雇用は守れますよ」と言って議論を迷走させつつ、控室では「ミニカー展示用の手ごろなビルがなくてね~」とぶっちゃけるなど生臭さ全開です。

参考リンク:森永卓郎先輩、そろそろ「貧困ビジネス」はやめましょう


2.正義感の強い小心もの

一方で、別にお金儲けなんて興味なしに左翼やってる方々も存在します。特徴としては、正義感は強いものの小心ものが多いという点があげられます。

彼らは、薄々自分たちの主張が間違っていることに気づいてはいますが、小心ものゆえに過去を総括して転向するような図太さはなく、1番のように「左翼はポジショントークだと割り切る」ことも出来ません。きっと日々、悶々としていることでしょう。

だからこそ、安保だの特定秘密保護法だのといった「多少なりとも自分の心の琴線に触れるテーマ」に対しては、オールド左翼としての残された情熱をそそいで反対運動を繰り広げることになります。

このタイプで、筆者が会った中でもっとも印象に残っているのは香山リカ氏ですね。氏はリベラルのど真ん中にいるつもりが、いつのまにか自らが“保守派”として下の世代に突き上げられる存在になったことに困惑している様子がはっきりとうかがえました。

氏は最近、反韓デモグループに対抗する活動に精を出している様子。そういうニッチで下品な連中の活動なんてわざわざ取り上げなくても、と筆者なんかは思いますけど、きっとあれは香山氏なりの自身への精神安定剤なんだと思います。





以降、
ブラックホールと化した民主党
日本にホンモノの左翼が産まれる日
補論:某女史が女モリタクたる理由




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Q:「外資に現プロジェクト要員として採用された自分は、終了と共に解雇されますか?」
→A:「今はとにかく人材不足なのでレアケースだと思います」



Q:「オリンピックって日本に必要ですか?」
→A:「やるなら低予算かつ効率的に主催して金満五輪へのアンチテーゼとすべき」







雇用ニュースの深層

フランスの失業率が高いわけ


フランスはここ3年ほど年間の平均失業率が10%を超えている雇用落第国です。原因ははっきりしていますが、国民がアレなので解決できそうにありません。



「定年後の賃下げ違法判決」でまた一つ賃上げ抑制要因が

日本の裁判官もアレなのでまた強烈な賃金抑制要因となる判決が出されました。



シャープ再生は何が日本企業に足りなかったのかを示す格好のサンプル

早速雇用は出来るだけ守るという約束を反故にしようとしている鴻海ですが、筆者は逆に鴻海流の再生プロセスを日本人すべてに示してほしいと願っています。





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成果主義にしても会社ってなぜ以前と変わらないの?と思った時に読む話

今週のメルマガの前半部の紹介です。
こんな質問を頂きました。

城さん、先日こういうブログを読みました。

富士通を退職して思うこと

以前に新人の畑違いの配属ネタについて終身雇用の弊害の一つだと書かれてましたが、やはりこうした退職者が出るのも同じ理由からでしょうか?

ただ私の記憶だと富士通は10年ほど前から成果主義を微調整して軌道に乗せ、NECみたいな同業よりも経営が安定的に推移していたような気がするのですが。このブログが本当ならまたネジが戻っちゃったということでしょうか?


筆者はもう富士通のことはよくわかりませんけど、確かに似たような話は他社の人たちからもちょくちょく耳にします。たいていこんな疑問ですね。

「うちも成果主義にしたのに現場は何にも変わってないんですが」
「我が社も成果型にシフトしようと思ってるけど何をどう変えればいいの?」
「そもそも成果主義って何ですか?」

なぜ成果主義を入れたのに変わりばえしないのか。機能させるにはどこをどう手直しすればよいのか。そして、そもそもソレはいったい何なのか。疑問に感じている人は少なくないはず。というわけで、今回は成果主義について掘り下げてみたいと思います。


良い成果主義、悪い成果主義

成果主義には、良い成果主義と悪い成果主義があります。まずは悪い方の成果主義から説明しましょう。きっと多くの読者は「あーあるある」と思うはず。というか9割以上の日本企業はまず悪い方の成果主義からスタートします。それは、だいたい以下のようなプロセスをたどって形成されることになります。

1.「なかなか業績伸びないなあ。そうだ、人件費抑制しよう!」と誰か偉い人が思いつく

2.とはいえ既に上げてしまった賃金はなかなか下げられないので、これから昇給する若手~中堅にのみ昇給ハードルを高くしようとする

3.そのハードルとして目標管理なんかを持ってきて給与や職位が上がらないことの理由にする

4.権限のある偉い人たちには特に影響ないので、会社全体でみると特に変化はない

「成果主義入れたんですけど何も変わらないんですが」という人の会社は間違いなく↑のパターンですね。そりゃそうですよ、実際に組織を動かすポストの人=もう出世してるから昇給昇格のハードル上がったってあんまり影響ない人ですから。会社的にはたいして変化はありません。

また「目標管理とかぜんぜん意味無しに査定される!」みたいな人も多いですが、それも当然。最初から人件費をいくらに抑えるという目標は決まっているので、頑張ろうが頑張るまいが関係なく低評価要員は必要なわけです。目標管理なんて後付けで説明するためのツールなんで、真に受けて頑張りすぎると精神衛生上よろしくありません。

という具合に、悪い成果主義だとけして組織全体のパフォーマンスが上がるわけではなく、成果評価ツールの導入等で事務コストがひたすら増えるだけで、人件費抑制以外のメリットは正直ほとんどないですね。

では、良い成果主義とはどういうものでしょうか。それは、のっけから悪い方の成果主義とは違う理由でスタートします。

1.組織にイノベーション起こしたい、勤続年数や性別によらず皆が活躍できる制度が欲しいという理由でスタート

2.権限のある人ほど責任も負うべきなので、当然、ポストについている人から導入。数値目標もビシビシいく

3.勤続年数ではなく役割に応じた処遇を与える仕組みに切り替え、どんなポジションの人でも活躍も出世も出来る流動性をキープする

4.組織の運営はもちろん、現場レベルでも活力が生まれ、以前と全く違った職場になる

ほとんどの日本企業は悪い成果主義からスタートし、そこで壁にぶち当たってきちんと課題を分析できた会社が良い成果主義に進化するパターンが主流ですね。といっても、そういう風に方針転換できる会社も多くはないです。

多くは壁にぶち当たった後、後述するように対処療法的な微調整を行うにとどまっています。理由は、結局は本気で誰でも活躍できるようなシステムにしようと思ったら、既に昇給している人たちの既得権にメスを入れるしかなく、なかなか労組がウンと言ってくれないからですね。

そういう意味では良い成果主義は既得権まで含めてどかっと再分配を、悪い成果主義はこれから昇給昇格する人たちの間でだけみみっちく分配をするものだと言えるでしょう。




以降、
自社の“成果主義”のレベルを測定してみよう
なんちゃって成果主義と楽に付き合う方法




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Q:「男性で結婚を機に地方に転勤させてほしいというのはアリ?」
→A:「ダメもとでお願いしてみる価値はあります」




Q:「ゆとり世代ってどう思います?」
→A:「たぶん十代からスマホとかSNS与えたら誰でも“ゆとり化”すると思います」







雇用ニュースの深層

パナマ文書騒動に見る共産党のネーミングセンス

「税逃れ」という微妙な表現で攻勢に打って出た日本共産党ですが、共産主義国である中国がパナマ文書中の最大のウェイトを占めているというおかしな話になっています。



自動車は電機ヒツジの夢を見るか

日本型雇用バンザイ論者は「トヨタを見ろ!」というのが口癖でしたが、このセリフは十年以内に聞かれなくなる可能性が高いです。


他。




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修士まで出たのにexcel入力やらされてやってられないと思った時に読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。先日、こんなニュースがネットで話題となりました。

非難&同情の声「院卒入社→短期間退職」ブログが話題

あー、これは採用担当者なら誰でも一度は経験してるはず。それくらい大企業ならどこでもある話です。筆者もなんだか懐かしくなりましたね。良い学生を採る→工場に配属→半年くらいでエスケープされる、というプロセスは実際に何度か目にした経験がありますから。

なぜ、採用と配属のミスマッチは起きてしまうのでしょうか。そして、個人が取りうる対策はどんなものがあるんでしょうか。組織について考えるいい機会なので簡単にまとめておきましょう。

結論から言うと、新卒採用のミスマッチは、ある程度の規模の日本企業であれば必ず存在し、解消することはまず不可能です。これはメーカーに限った話ではなく、筆者の知っているケースでも総合商社に就職したのに国内スーパー担当になってブチ切れてるトリリンガルとか、財務経理志望でインターンも複数社経験した上で入社したのになぜか営業配属になったりか、そういう人は掃いて捨てるほどにいます。だいたい4月の配属発表の場で泣いてる人は数人はいるものです。

そうやって泣いている人を、日本企業はゼロにはできないし、そもそもするつもりもないでしょう。なぜか?それは、そうした涙こそが「日本型雇用の強み」だからです。

採用ミスマッチがどうやっても避けられないワケ

ミスマッチが生じる理由としては、まず採用活動と配属決定の時期的ズレがあげられます。当たり前ですが、企業は採用活動を開始する前に、大まかな配属枠を決めます。たとえば2017年4月入社者に対する配属枠は、だいたい2016年の春先に決まっているものです(従業員数が数万人いるようなマンモス企業だと各事業部から数字を集めるだけで2か月くらいかかるので2015年末くらいだったりもします)。

すると、実際に配属先の決定する時期(2~4月上旬)との間に、1年以上のズレが生じることになります。新聞社とか公務員ならともかく、普通の民間企業で一年間というといろいろビジネス環境に変化が起きるものです。はっきり言えば、1年前の人員計画と現実のニーズの間にはかなりのギャップが生じるはず。

我が国においては内定が事実上の雇用契約とみなされるので、一度内定を出した以上は65歳まで面倒を見ることが前提となります。「予定変わったからよそへ行ってくれ」というのは許されません。そこで、あえて配属約束は曖昧にしておき、配属発表で一部の人に泣いてもらうことで上手く調整するわけですね。これが「涙は日本型雇用の強み」と言った理由です。

ついでに言うと、事務方である人事部門が一括して採用する手法もミスマッチの原因の一つですね。その業務に携わっている各事業部門が直接採用する方が、間違いなく人事部門が選ぶよりもよりマッチした人材を採用できます。営業にせよ開発部門にせよ、即戦力度は大きくアップするはず。

でも、そうして職場がダイレクトに採用してしまった人材は事実上の配属約束付きであり、入社後に別の部門に配属したら絶対に納得はしないでしょう。入社時は志望通りの部署に配属されても、5年経ち10年経つうちに、本人の希望よりも組織の都合を優先して異動してもらわなければならないタイミングが必ずやってきます。

だって終身雇用である以上、人が余っているところから足りないところに会社命令で異動するのは当然の義務だから。そういう時に、はたしてピンポイントで一本釣りされた人はあっさり異動を受け入れ、翌日から新たなキャリアに邁進してくれるでしょうか。筆者は難しいと思いますね。

まとめると、現在の終身雇用制度を前提とする以上、やはり間に人事部門が入って大雑把な採用活動をやり「いざ入社してみるまでどういう仕事をどこで行うのかすらわからないし、その後のキャリアパスも深い霧の中」状態で新人を採用するのが一番合理的ということになります。そして“ミスマッチ”は入社時だけではなく、その後も異動などで定期的に発生するものであり、日本企業で働く以上は腹をくくって付き合っていくしかないわけです。

本気で採用ミスマッチを無くそうとするなら、

1. とりあえず新卒一括採用は廃止、各事業部門ごとに通年採用する
2. 雇用死守が原則の終身雇用をやめ、職務をベースとした流動的な労働市場に移行する

くらいやらないといけませんが、こればっかりは明日明後日に実現する話ではありません。というわけで、これまでも多くの新人が「聞いてないよ!」という部署に配属されてきましたし、これから先も配属され続けることでしょう。



以降、
ただし、強みは同時に弱みでもある
大学での研究内容がそのまま活かせる職に就ける新人はほとんどいない
氏の判断は正しかったか
希望と違う部署に配属、異動となった際の処方箋




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Q:「ずばり聞きます、城さんてひょっとして〇〇ですか?」
→A:「ちげーよ(笑)」



Q:「新人ですが入社してみたら就活時の説明とぜんぜん違うんですけど」
→A:「逆に普通の学生だった新人がいきなり会議で活躍したり有給取りまくったりする会社があったらそっちの方が怖いです」






雇用ニュースの深層

アベノミクス行きづまりの主因は労働市場改革の停滞

予想通りアベノミクスが今年に入って旧失速したことで、金融緩和以外に処方箋を求める向きがようやく国内にも高まってきているようです。



自民党内から高齢者定義の見直し、高齢者向け社会保障カットの提言

社会保障改革にしろ財政再建にしろ、早く手を打つことで広い世代で痛みを共有することが可能となります。





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月刊公明「同一労働同一賃金で非正規待遇と労働市場の改善を」のお知らせ

月刊公明5月号にインタビュー「同一労働同一賃金で非正規待遇と労働市場の改善を」が掲載されたのでご報告。


同一労働同一賃金の実現は労働市場流動化の結果として実現するものであり、そこをスルーして法改正で一足飛びに実現しようとしてもザル法が一つ増えるだけの結果に終わるだろう。

そういう意味では、一回ものすごいザル法作って玉砕するのも、みんなで構造的課題を考えるいいきっかけにはなるかもしれないが。

フリーランス女医が教える 「名医」と「迷医」の見分け方



ドラマ「ドクターX」の監修も行った著者による、医療現場のリアルを赤裸々につづった本書。実に刺激的かつ、雇用問題としても興味深い内容だ。というのも、もともと専門職であり職務給とも馴染みやすい医療は、労働市場の流動化の先行モデルとして適しているためだ。

著者の主張をまとめると、大きく以下の3点に絞られる。

・既存の大病院や大学病院はこてこての終身雇用・年功序列型組織である

意外に知らない人も多いようだが、よくテレビなどで「年収ウン千万」と豪語している先生は(成功している)開業医であり、勤務医の多くは年収1000万~1500万くらい、ちょっとリッチなサラリーマンといった給与水準に過ぎない。

くわえて、「ポスト不足」や「組織の高齢化」といった諸問題に直面しているという点でも、医者とサラリーマンはそっくりだ。若手もなかなか配属されないしポストも足りないから「“臨床教授”だの“特任教授”だのといったポストを乱発して中高年医師の自尊心を満足させてやりつつプレイングマネージャーとして前線投入」という話は、担当部長とか課長代理とかと置き換えればそのまま民間企業でも普通に見られる光景だ。

でも終身雇用・年功序列の最大の弊害は、やはり個人ごとの明確な評価、処遇システムが欠落している点だろう。多少の査定はあっても基本的に各医師は勤続年数に応じて処遇も役割も上がっていくのだが、実際にはスキルは人によってピンキリである。すると腕のあるドクターのもとには次々に過酷なオペが舞い込み週に二日も三日も徹夜する一方、「あの人に頼むと患者殺すレベル」的な人はあっさり定時上がりが可能となる→でもお給料に大した違いはないから「ヤブほど時給が高くなる」という恐ろしい現象が発生することになる。

・そして、それらは崩壊の瀬戸際にある

当然のことながら、これでは優秀者や将来性のある若手はやっていられない。比較的流動化しやすい専門を中心に、医師の流動化は既に始まっている。「俺に逆らったらもうおまえの出世の芽はないからな」という白い巨塔時代の絶対君主的な主任教授はすでに過去の存在になりつつあると著者はいう。なぜなら現在は多くの“医師専門人材紹介会社”が存在し、労働環境の悪い職場からよりよい環境へのエグジットを熱心にサポートしてくれるから。

「俺に逆らったらおまえら、分かってるだろうな」
「じゃ辞めます」
「え・・・?」

という感じで、マネジメントの悪い部局からは部員丸ごと逃散なんてことも近年では勃発しているそうだ。

当然ながら、こうした事態は学会のエスタブリッシュたちにとっては面白いはずがない。転職なんてもってのほか、若手は上のものに無条件で服従すべきだというのが彼らの言う古き良き伝統なのだ。実際、某学会理事長は学会ニュースレター上で病院における滅私奉公を拒否して流動化する医師たちを公然と「モラルの喪失と感じさせる案件」と非難した。

で、それに対する著者の回答はコレである。

(理事長殿は)
「『論文2本で教授になる方法』とか『インパクトファクター6で学長になった僕』といったハウツー本でも書けば、かなり売れるんじゃないだろうか」


ネットは転職ハードルを下げただけでなく、実績が薄いにもかかわらず年功序列でポストに就いた人をも丸裸にしてしまう。そういう人がどんな高尚なことを言ったところで「俺も滅私奉公したんだからお前らもやれよ」という本音は丸見えだ。

こうして優秀者が流動化する以上、彼らの腕を買うためにはそれに見合った報酬を用意するしかない。そしてそのためには分不相応に貰っている人間を切るしかない。医療においては長期雇用の崩壊と流動化は避けられないだろうというのが著者の見方だ。

・労働市場の流動化は素晴らしいメリットにあふれている

さて、そうして一足先に組織から流動化した医師たちの処遇だが、中には複数の大病院と契約し一億の大台を稼ぐ猛者もいるほど活況だという。そこまでがっつかなくとも、確かな技術と経験があり、初めてのスタッフとも良好にコミュニケーションの取れる能力さえあれば、勤務医時代を大きく上回る処遇を確保することは十分に可能だそうだ。

なにより、そこには多様な働き方の無限の可能性がある。自身も母である著者の意見は傾聴に値する。

産休・育休も、本人は無給となるが、周囲には迷惑がられることはない。育児時短を取る際も、出来高制の契約ならば同じ病院で働いても「麻酔2件で16時に帰る医師」と「4件で21時まで働いた医師」にはそれなりの報酬差が発生するため、両者に軋轢は生じない。


本来、働きぶりに応じて処遇を決めさえすれば、何の不満も不都合も生じることはない。そのプロセスに、賃金や雇用を維持させようと政府が手を突っ込むからいろいろと歪みが生じるのだ。

もちろん、組織を離れた人間は完全に自己責任が問われることになる。スキルが低かったり人間性に難のある人材はすぐに干され、誰からも声のかからなくなる弱肉強食の世界だ。でも、それは同時に、もっとも健全な世界でもある。

ドラマ「ドクターX」の冒頭では「命のやり取りをする医療も弱肉強食の時代」とナレーションされたが、「命のやり取りをする医療」だからこそ「弱肉強食」であるべきなのだ。とくに、生死を左右する手術室とはそういう職場であるべきだ。


「ホントは自信無いんだけど昇進に実績必要だから切らせてよ」みたいなセンセイにオペされたり、優秀がゆえに徹夜続きのふらふらの中堅ドクターに腹ン中に手突っ込まれたりするよりも、市場原理の行き届いた病院で処置していただきたいと願うのは筆者だけではないだろう。






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著作
「10年後失業」に備えるためにいま読んでおきたい話


それゆけ!連合ユニオンズ[上]


若者を殺すのは誰か?


7割は課長にさえなれません


世代間格差ってなんだ


たった1%の賃下げが99%を幸せにする


3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代


若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
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城繁幸
コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
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