「どうにかしろ」を一歩とし、「こうしよう」にまで高めていってほしい

23日に、こういうデモが予定されているらしい。
就活どうにかしろデモ
http://syukatudemo.blog77.fc2.com/

個人的には賛同できる部分もそうでない部分もあるのだけど、とりあえず何かアクション
を起こすのは良いことだと思うので、とりあえず紹介しておこう。

さて、以下は雑感。

やはり、就職活動の早期化&長期化により、それが学生生活に占めるウェイトがここまで
高まった現状は、僕も何とかすべきだとは思う。
ただ、それを否定する以上は、何が学生の本分なのかをしっかり認識しないといけないとも思う。
「就職活動が短くなったから、遊びに行こう」じゃ意味ないわけでね。

そしてもっとも重要な点は、そろそろ構造的な課題への解決策もパッケージで主張しないと
いけない時期なんじゃないか、ということ。


90年代~2000年前後の元祖氷河期の経験から言うと、学生が大変らしいという話は結構
伝えられていたのだけど、結局は「へーそうなんだ」的に社会的スルーをされて今にいたる。
そりゃそうだろう。この問題は、突き詰めれば連合という大手正社員の既得権に行き着くわけで
そういう利害対立する人達がメディアから政治、行政まで、あらゆる組織の意思決定を握っている
わけだ。

そういう鉄の壁を前にして「なんとかしろ」と言っても、高みの見物をされるだけである。
というか、高みの見物をされてしまったわけですよ氷河期世代というのは。

はっきり言って、君たちは氷河期世代より悲惨だ。不況というマクロショックの影響にくわえ
グローバル化による産業構造の転換という大波もモロにかぶることになったから。
もう日本人の新卒というだけで正社員の椅子はもらえない。

「数年耐えれば求人は回復するのではないか」と思っている人がいるかもしれないけど、
それはない。確かに氷河期世代には、2003年前後の数年間に敗者復活ステージがあったのだけど
今起きていることは氷河期ではなく、新卒バブルの崩壊だから、もうそんなボーナスはありえない。

今年正社員の椅子に座れなかった人間のほとんどは、非正規雇用や下請けの中小企業で、
長く苦しい下積み人生を送ることになるだろう。
だから、こうなった以上は壁を壊すしかない。自分達自身の手でね。

そうそう、君達が恵まれている点も一つある。
10年前と違って、今はいろんな先輩達が問題の本質を指摘してくれているから、やる気さえあれば
形にするのはそう難しい話ではない。
どうせデモやるなら、連合あたりにでもデモしかけてみてはどうか。
いつまでもリップサービスでお茶を濁せるわけではないと、彼らに教えてやれるはずだ。


『フクシ伝説』 好きなことを好きなだけやってきた親子の物語

フクシ伝説 うちのとーちゃんは三冠王だぞ!
落合 福嗣
集英社


あらたまって紹介するような本でもないのだけど、暇つぶしに読んでみたら、いろいろと
考えさせられてしまったので紹介。三冠王の一人っ子、落合福嗣くんの自伝である。
まだ学生の身分で自伝というのも、なんだか凄い話だが。

様々な芸能人にため口をきいたり、女子アナにセクハラしたり(小学生時)、
篠塚に「おまえの背番号、父ちゃんによこせ」と詰め寄ってみたり、そういう伝説の検証
から入り、後半は父である落合監督との対談に入るのが、ここが色々な意味で深い。

有名な話だが、落合博満というのは、いわゆる野球エリートコースの出身ではない。
甲子園には出たこともないし、大学野球も活躍どころか半年で中退した。
本人いわく、「7回も野球を辞めた」そうだ。
中でも、最後の辞めっぷりが凄い。大学入学して三カ月、野球も大学も何もかもが嫌になり
ぷぃっと寮を出て2週間以上、公園で寝泊まりしていたという。
それから大学辞めて田舎で日雇い仕事を1年以上続け、二十歳になってようやく就職した
のが東芝というわけだ。ちなみに、雇用形態は期間従業員。
ここから、彼の野球人生が事実上スタートすることになる。

あんまり詳しくないからわからないけど、他にこういう紆余曲折の経歴を持つプロ選手は
いるだろうか。まあ、それだけ選手としての落合が凄かったということなんだろう。
要するに、レールに乗らない人生を自ら実践して見せているわけだ。

そんな氏だけに、一人息子の教育も型にははまらない。
じっくり時間をかけて、自分のやりたいことを見つけ出せというスタンスだ。

「まあ、オレだって高校から数えると、東芝府中に期間従業員として入るまで約5年間、
まともに野球をしていなかったわけだ。そんな人間がプロ野球に入って、今では監督を
やらせてもらっている。人生どうなるかわからんぞ」
「うん、とーちゃん。ボクも焦らずに自分のやりたいことを探していくよ。それでこれが
ボクの生きる道だっていうのが発見出来たら、その道を進んでいこうと思う」

それが見つかるのは個人差があって、落合のように十代で大学ばっくれて後楽園で野球
見てるときに運良く見つかった人もいれば、30歳過ぎても見つからない人もいる。
いや、一生見つからずに終える人も少なくないはず。そういう個人差はあっていい。
問題は、それが見つかった時点で、人生の軌道修正ができるかどうかだと思う。
日本においては、そこはとても硬直的である。
結局のところ、個人のキャリアという点で生じている閉塞感というのは、突き詰めれば
ここに根源があるのではないか。

何にせよ、自力で軌道修正できるほどの資質がある落合と、のんびり構えていられるフクシ君
は恵まれているとは言えるだろう。

ときどき、仕事柄、年功序列や終身雇用といった枕木が綺麗に無くなった社会について
考えることがある。そういう社会ではどういう風に生きるべきか。
落合式の生き方、子供の育て方というのは、そのひとつのモデルになっているように思う。
あんまり年齢が重要じゃなくなって、ストレートじゃなくて寄り道してる奴の方が「面白い」
なんて評価されるような時代になれば、好きなこと好きなだけやった人間が本当の勝ち組に
なれるはず。

フクシ君がとくに何か偉いことしたわけでもないのに連載やったり自伝出しちゃったりする
だけの需要があるのは、彼にどこかしら新しい時代の匂いが漂っているからではなかろうか。

月刊CIRCUS 12月号

CIRCUS (サーカス) 2010年 12月号 [雑誌]
クリエーター情報なし
ベストセラーズ


「サルでもわかる常識シリーズ」にてインタビュー掲載中。テーマは“解雇規制”。
まあ内容についてはいつも話していることなのでここでは繰り返さないが、
元リクルートで前杉並区立和田中学校長の藤原和博氏のインタビューが面白い。

2,30代の若手サラリーマンに対するアドバイスを求められた氏は、こう言う。
「本当にあと30年間サラリーマンを続けるかどうか、よく考えてほしい」

ただし、転職をすすめているわけではない。
「軸をどこに置くかということです。軸は絶対に会社に置かなければならないという時代では
もはやないと思います」

僕がいつも言ってることとまったく同じ。まあ、誰が考えても結局そこに行きつくのだろう。
もはや年功で報いられる時代は終わった。ということは必然的に軸足を会社以外に置く人間が
増え、滅私奉公とか愛社精神とか、そういうムラ社会的な残存物は徐々に消えていくのだろう。
そういう雇用にへばりついた垢みたいなものが全部落ちて、「仕事=生活の対価を得るための手段」
という価値観が確立した後に、職務給が確立するのかもしれない。

若者マニフェスト、コラム更新のお知らせ

若者マニフェストのコラムを更新しました。
「むしろ国政以上に地方の方がシルバー・デモクラシーは激しい」

今見ると、「日本以外全部沈没」は実に素晴らしい映画だ

日本以外全部沈没 [DVD]
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角川エンタテインメント


全然大した話じゃないのだけど、先日たまたま鑑賞した「日本以外全部沈没」という映画
について紹介。この映画、知ってる人も多いと思うが、日本映画にしては割とそつなく
まとまっていた「日本沈没」のパロディ作品。
要するに日本以外が全部沈没して、日本に逃げてきた世界各国の人々の悲喜こもごもを
皮肉たっぷりに描くわけだが、これが実に小気味よい。さすが「イカレスラー」の川崎監督。

ただ、僕がわざわざ3年前の映画についてここで書こうと思ったのは、今見るとその
ブラック度が飛躍的に高まっているから。以下、劇中より意訳。


日本の総理「そういえば、北方四島、全部沈んじゃったねえ、残念だったねえ」
元ロシア大統領「何言ってるんですか、元々あそこにロシアの島なんて一つもありませんよ」

中韓の元・元首「いやあ、ちょうど神社にお参りしてきたところです!日本最高!」
元国連事務総長「おまえら、歴史はどうした?」
中国「大陸とともに沈めてきました」
韓 「もう水に流しました」
総理「いいねえ君たち、座布団一枚」

そしてなにより秀逸なのが、村野武範演じる総理が、どう見ても菅さんにしか見えない点。
まだ安倍さんが総理やってる頃にこの映画が作られたと考えると、いろいろと感慨深い。
普通のパロディ作ったつもりが、状況の変化によって奇跡の一品になってしまったわけだ。
たぶん、地上波では絶対やらないと思われるので、興味のある人にはおススメしたい。
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城繁幸
コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
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