炎上で仕事干されかけた時に読む話

先日、フリーアナウンサーの長谷川豊氏の書いたブログ記事が大きな波紋を呼びました。

「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!今のシステムは日本を亡ぼすだけだ!!」
(リンク先:タイトルは修正済)

炎上はネット内だけにとどまらず、とうとう氏は地上波レギュラー8本すべて降板するところまで追い込まれています。

件の記事内容についてはいろいろな人が解説しているのでここでは触れませんけども、氏の炎上から地上波レギュラー全降板にいたるまでのプロセスはいろいろと衝撃的でしたね。炎上の規模、取引先への延焼のスピード等、近年まれにみる炎上ではないでしょうか。

なぜ、キー局を追われた男は、不死鳥のごとくよみがえり地上波8本レギュラーを手にするまでになったのか。そして、なぜ男はわが身を焼き尽くすまでに炎上してしまったのか。そのプロセスをひもとくことは、多くの人のキャリアデザインにとっても意義あることでしょう。

やっちゃいけないこと てんこ盛りの謝罪文

ここで氏の略歴を振り返ってみましょう。氏は2013年にフジテレビを退社し、フリーになりました。その経緯はよくわからない点が多いのですが、事実としては、キー局の第一線のアナウンサーであった氏が突然アナウンサー職を解任され、事務部門に異動させられた、そしてそれは事実上の戦力外通告にひとしく、実際、氏は自ら退職してフリーになったということです。要は、組織と何らかの対立があり、職を追われたということです。

さて、フリーになった後は鳴かず飛ばずになるアナの多い中、氏はここから急ブレイクし、他局のニュースキャスター職に抜擢されるまでになります。その理由ですが、毒にも薬にもならないことしか言わない飼い殺し局アナと違い、ざっくばらんに本音を披露したこと、普段出てこないような既存メディアの内部事情を初めて公にしたことなどが理由でしょう。そういうノリを“炎上芸”と呼ぶ人もいますが、筆者はそれはそれで立派な個性だと思いますね。正社員と違い、リスクをとっているからこそ、はっきりと自分の意見を言うことができたんでしょう。

ネットは、とかくテレビや新聞などの既存メディアに対して批判的です。メディアは自分たちの意見は取り上げない、メディアは自分たちを無視している……etc

そんなメディアの殻を突き破って彗星のごとく現れ「テレビじゃあみんな綺麗事しか言わないけれども、俺はこう考えてるんだぜ」と本音をばしっと言ってくれる氏は、ネットととても親和性の高い存在だったわけです。ブログやメルマガ、ストリーミング放送といったネット空間で得た存在感をロケット推進装置として、氏は地上波の世界へ再進出していくことになります。

でも、ネットと地上波の両方で存在感を発揮するキャリアパスというのは、非常に狭くて危なっかしいものです。たとえば2ちゃんに書いてあったことを実社会で嬉々として語ると相当痛い人と思われてしまいますが、そういうネタをネットと実社会の双方に説得力ある形で語れないとやっていけないわけです。これは相当難易度の高いスキルだと思います。

先行モデルとしては、元経産官僚の古賀さんがいい例です。“伏魔殿”たる霞が関から飛び出し報道ステーションレギュラー枠を勝ち取るまでにブレイクしたものの、バランス取りに苦労した挙句に報ステからリストラ、生放送で逆ギレした挙句に「政府とテレ朝上層部のせいでワタシはクビになります」とやらかした彼です。

今回の騒動のきっかけとなった長谷川氏の元記事を見るに、ぎりぎりでバランスとろうとしつつ超えちゃいけない側に踏み外してしまった感があります。たぶん氏もバランス取りに相当苦労したんではないでしょうか。

ただ、筆者はむしろ、氏が本当に下手をうったのはここからだと見ています。


「あくまで病院の先生方の忠告をことごとく無視し、それでも長年にわたって自堕落な生活をしてきて、その後に透析患者にまでなった患者に対して「のみ」話しているのです。よく読んでください。明確にそう書いてあります。
しかし、世の中には、歪んだ正義感を振りかざす、ネット上でしかうっぷんを晴らすことのできないバカが田舎の公衆便所の小バエのごとく、大量にいます。そいつらが、ここまで悪質なツイートや拡散をしてくるとまでは、さすがに予想の範囲外でした」
余りの低レベルな言葉狩りに戸惑っています(9月24日ブログ記事)より



「そして、ネット上のみんなも、ちょっと聞いてほしい。
乗っかって、僕を叩いて、
ご覧のように僕はテレビの仕事を失いました。

これでみんなに何か残ったか?
君らに何かプラスがあったか?

君らがネットにうっ憤を晴らすしかできなくなったのは、社会のせいじゃない。君ら自身の性格や努力不足のせいだ」

ありがとう(10月6日ブログ記事)より



ちょっとこんな光景を想像してみてください。キー局を追放されながらも、ネット民に担がれた神輿に乗って不死鳥のごとく地上波に舞い戻り、快進撃を続けている長谷川氏。そんな時、ふと担ぎ手の一人がこう言います。
「大将、さすがに今度のはちょっと下手うったんじゃあないですかい?」
「ネットの連中なんていうのはネットでしかうっぷん晴らしできない公衆便所の小バエみたいなのだからどうでもいいんだ。あ、公衆便所つってもお台場とかじゃなく田舎のやつね」

→神輿かついでたネット民、神輿を放り出して近くの草むらに逃げ散る。

放り出されたハッセー、呆然としつつ、とりあえず謝る。

「へん、ああ、悪かった悪かった。でもオイラは地上波8本も出てるエリートだからどうってことないさ。おまえらがネットしか居場所がないのはお前ら自身の自己責任だろ」

→草むらの中から石がいっぱい飛んでくる。


反・既存メディアのヒーローとして担ぎ上げられていたはずの氏が、いつのまにやら「やっぱ地上波は凄い。それに週8本出てるオレはもっと凄い」「ネットの奴らなんて他に居場所がないだけの連中」なんて言ったらダメでしょう。しかも二本目の記事タイトルが「ありがとう」って言うのが泣かせます。タイトルで持ち上げといてオチで大ダメージ狙ってるとしか思えません。これで一気に抗議者が増える一方、氏を支えてきたネット上の存在感が薄れることで既存メディア側も見切りをつける流れになったように見えます。

あ、書いててふと気づきましたが、なんだかクモの糸のカンダタみたいですね。




以降、
問題提起と謝罪、突っ張っていいのはどちらかだけ
「月100時間残業くらいで死ぬのは情けない」という長谷川センセイのケース



※詳細はメルマガにて(夜間飛行)








Q:「直属の上司に今の部署が合わないからと異動を希望するのは失礼でしょうか?」
A:「正直に相談して、それでダメなら……」



Q:「一年目社員の自殺を防ぐためには会社は何をすべきだったのでしょうか」
→A:「残業時間に配慮しつつ、仕事の位置づけや展望をしっかり話すことです」







雇用ニュースの深層

・ほっとくと消費税はずるずる30%台まで上がります

ほら言わんこっちゃない。さっそく与党の中から15%引き上げを求める声が出てきました。


・ブラックNPOはいいのか(笑)

まあ労働界隈では数年前から有名な話でしたが。




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・夜間飛行(金曜配信予定)






過労死といかに向き合うべきか

電通の入社一年目の女子社員が月100時間超の長時間残業の末に自殺した件が労災認定されたというニュースが波紋を呼んでいる。事実関係はこれからいろいろ明らかになるだろうが、とりあえず重要な論点だけまとめておこう。


・なぜ長時間残業は防げないのか

これはいつも言っているように、長時間残業は終身雇用下で雇用調整を行うための手段なので無くすのは難しい(そもそも事実上残業時間に上限がない)。本気で無くそうと思えば「残業時間に月○○時間まで」といった上限を設けつつ解雇ルールも明文化し、

繁忙期も長時間残業で対応→繁忙期には新規採用で対応

という風に雇用調整手段を残業増減から採用・解雇に切り替えるしかない。そうなれば暇になったときに誰かがクビになるわけだが、今回のように誰かが死ぬよりは百万倍マシだろう。

ただ、こういう処方箋は何十年も前から提示されているのに、なかなか議論は進まない。現政権の働き方改革は長時間残業の抑制を掲げているので方向性は正しいが、左派や労組は“解雇”には絶対反対だから骨抜きになる可能性が高い。解雇規制を緩和せず残業に上限をつけるだけなら、単にサービス残業が増えるだけだろう。

結局のところ、有権者の多くが「過労死より解雇の方が百万倍マシ」と腹をくくらない限り、なかなか状況は変わらないだろう。

・大企業ほど人は死ぬ

上記のように長時間残業は終身雇用とセットなのでそれ自体はどこにでもある。ブラック企業の定義は「長時間残業などの滅私奉公をしても、将来的な見返りのない会社」である。電通はそれなりに将来的な見返りのある大企業なので、その意味でブラック企業とは言えない。

ここが重要なところで、将来的なリターンが期待できる大手企業ほど、従業員はリターンのために頑張ってしまう傾向がある。

本当のブラック企業なら月100時間超の残業が続けばすぐに従業員は辞めるので、何らかの対策をうって労働環境を改善するインセンティブがある。従業員が逃げ出して店舗運営が出来ず、大幅なオペレーションの見直しに追い込まれたすき家が好例だ。

電通はバブル以前から一貫して就職先として高い人気を誇る優良企業だ。恐らく若手ならどんなに無理をしてでも踏ん張りたいという思いがあって、それが組織として必要なメンテを行うインセンティブを薄めてきたのではないか。

実は電通は90年代にも2年目の若手社員が過労自殺するという事案を残しているのだが、残念ながらそれが何らかのマネジメントの向上につながったようには見えない。

こうした問題に際し「労基署の人員を増やせ」見たいなことを言う人もいるが、現状、月100時間だろうが150時間だろうが長時間残業そのものは合法なので意味がない。人事部門や管理職によるチェック体制もすべてのシグナルを把握できるかというと筆者は限界があると思う。

結局のところ最大のセーフティネットは「限界を感じたらいつでもさくっと転職できる流動的な労働市場」であって、新卒カード使って大企業入ったら石にかじりついてでも耐え抜かないと元が取れないという現状ではそうしたセーフティネットは機能せず、同種の悲劇は繰り返されるように思う。


・現状の枠組みの中でどう対処すべきか

とはいえやはり電通の対応にはかなり問題があるように思う。

終身雇用型組織は一種のムラ社会であり、正社員はムラ人としてムラの掟を全面的に受け入れる必要がある。オリンパスや東芝といった錚々たる大企業の長期に及ぶ不正隠避はそうした掟をムラ人らが受け入れ続けた典型だ。

ただ、そうしたムラの掟と一般社会の常識との間に大きなギャップがあることは企業も百も承知なので、免疫のない若手にはそれなりの配慮がなされるのが普通だ。具体的にいえば、一般的な企業なら、入社3年以内の若手には100時間を超えるような残業は通常させないし、転勤なども命じない。

そういう中で、今回のように一年目の社員に100時間を超える残業をさせていた、管理職も放置していた(ようにSNSからは判断できる)というのは、筆者にはかなり奇異に映る。同社が現状の枠組みの中で対策を取るなら、取り急ぎ入社3年以内の若手は業務負荷を見直し残業は月80時間未満に抑制する、人事部門が全社横断的に勤務状況を厳しくチェックするなどの対応を取るべきだろう。少なくとも91年以降にそうした対応を取っていれば、今回の件は起きなかったに違いない。

残業、カッコ悪い、と偉い人が言い出した時に読む話

今週のメルマガの前半部の紹介です。最近、「長時間残業は悪だから見直そう」というのが大流行ですね。安倍総理が長時間残業の抑制を働き方改革の目玉とする一方、小池都知事まで都職員の残業抑制を図るため一斉消灯などの対策をとるそうです。

筆者自身も残業の多い奴はただのバカとしか思ってないので喜ばしいことだとは思いますが、それにしてもなぜこのタイミングで残業抑制がトレンドになったんでしょうか?

そして、そもそもなぜ日本は“Karoshi”が英語になるくらい長時間残業の多い国だったんでしょうか?

キャリアを考える上でも重要な視点だと思いますので、今回はこれらを整理しておきましょう。


なぜ日本人は一杯残業しないといけないのか

理由は以下の3点です。

1. 終身雇用を守らないといけないから

これは筆者が常々言っている話ですが、日本は正規雇用の解雇が先進国中最も難しく、判例でも厳しく制限されているため、雇用者数で雇用調整出来ない→残業時間で雇用調整する、というシステムになっているためです。

具体的に言うと、年のうち3か月くらい「月100時間超の繁忙期がある職場」があったとします。もし残業時間に月45時間という上限があれば、会社は新しく人を雇って対応しないといけません。ただ、あくまでも一時的なものなので、暇になったら誰かがクビになるわけです。

「そんなのはイヤだ」と労組が言い、企業も熟練工(もう死語ですが…)を育てたいから長期雇用がいいやと考え、政府も三六協定に抜け道を作って後押しした結果、週に二日でも三日でも徹夜できて人を雇わずに済む現在のシステムが成立したわけです。別に経営がやらせてるわけではなくて、労使が一緒に作り上げてきた共同作品なわけです。

そういう背景をすっとばして誰かの都合で「残業だけやめさせろ」とやっても、終身雇用を見直さない限りはなかなか成果は上げられないでしょう。

と書くと「うちは中小企業だから終身雇用なんかないぞ」と思う人もいるかもしれませんが、こういうルールは大企業とかお役所を基準として作られているので仕方ないですね。要するに中小零細企業の人なんかはあるのかないのかわかんないような“終身雇用”のために青天井で残業させられてるわけです。はっきりいってなんの意味もないと思います。人生ドブに捨ててるようなもんです。筆者がよく「終身雇用なんて大企業と公務員以外にメリットないからさっさと潰せ」と言っているのはこういう事情です。


2. 担当業務の範囲が曖昧だから

さて、残業が多い理由2つ目は、日本企業では担当業務の切りわけが極めて曖昧で、効率化が図られにくいからです。

他国で一般的な職務給方式の場合、担当する業務に値札が付いていて範囲も明確ですから、ゴールも明確で裁量一つで効率化も図れます。一方、初任給から勤続年数に応じてちょこっとずつ上がっていく日本の職能給の場合、自身の裁量が振るえる余地はわずかです。
「早く終わっても帰りづらい」とか「早く終わらせてもどうせ仕事が降ってくるだけ」とか言う意見は、こうした事情を反映したものですね。

3. 時給で給料もらっているから

もう一つ、日本の残業が多い理由があります。意外と見逃されがちですが、実はこの3点目が非常に重要な意味を持ってたりします。それは「時給でもらっているから」です。

日本企業では東大卒のコンサルだろうが研究員だろうが、時給でばっちり管理され残業代も支給されます。ある程度のポジションに行けば年俸制や裁量労働制なんかも適用され始めますけど、一般の労働者は時給で管理されているので、労組もそちらに立って交渉するわけです。

ただ、ホワイトカラーの仕事は机に座っていた分だけ成果が上がるもんでもないので、一杯残業しても人件費の原資は横ばいなわけです。すると、どうなるか。単純に基本給とかが低く抑えられ、残業代に回されるわけですね。大雑把に言えば、月50万円貰ってる人に成果で支給しましょうかと聞いたら「イヤだ、時給で払ってくれ」というので基本給25万円にしてあとの25万円は残業代にまわすんでいくらでも残業してOKですよ100時間くらいすれば元取れるんじゃないですかね、みたいな感じです。朝三暮四のおサルさんみたいですね。

実際、同じような業種で同じくらいの規模の会社を比べてみると、残業代をばしっと払ってるA社の方が、サビ残だしまくりのB社より給与ベースが2段階くらい低いなんて話はよくありますね。

「我がA社は残業代100%支給の超ホワイト企業だ、ラッキー」なんて喜んでるんだけど、実際には月100時間以上残業しないとB社の給与水準に勝てないというバカも結構実在します。筆者からすればA社の方がブラック企業なんですが、まあ本人が幸せならそれでいいんでしょう。こういうシステムである以上、なかなか労働者の側からも効率化して残業時間を抑えようというインセンティブは湧いてきません。

とはいえ、時給で貰うメリットももちろんあります。それは「どんなバカでもとりあえず机に座ってればお給料がもらえる」というメリットです。で、労働組合も「成果じゃなく時給で払え」という立場に立ってきたわけです。そういう意味では、残業代というのは一種の既得権みたいなものですね。

以上の3点が、日本の残業が多い理由です。まとめると、終身雇用の看板を守るために、同僚と一丸となって部活の練習みたく働き、給料は働いた時間に応じて受け取る結果、世界に冠たる長時間労働の国が出来上がったわけです。




以降、
残業時間に上限つけたら何が起こるか
残業もサビ残も無くす方法





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Q:「『5年頑張ったら必ず本社に戻す』という約束は信じていい?」
→A:「口約束ってあんまりアテにはならないんですよね」





Q:「TOEICで選抜したら同じタイプの人材ばかり入社するようになったのですが…」
→A:「英語できるバカは何年たってもバカですが英語できない奴はできるようになる可能性があります」




雇用ニュースの深層


クビにするか、飼い殺すか

その企業が手を引いた事業のエンジニアをSEや顧客サポートセンターで飼い殺すのは社会的な損失です。今、本当の成長戦略とは何かが問われています。



インターンは就職への近道

たとえ他社のインターンであっても実際のビジネスの現場を経験し、またそのための努力も惜しまなかった人材を、人事は高く評価していることになります。




取りやすいところから取る、の分かりやすいプロセス

結局のところ、いくら反対しても対案が無い以上は相手にされないわけです。





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若者ってなんで公務員になりたがるの?と思った時に読む話

今週のメルマガの前半部の紹介です。先日、大学1~2年生を対象とした就職志望調査において、地方公務員&国家公務員が鮮やかなワンツーフィニッシュを飾るという衝撃の結果が話題となりました(ちなみに2年連続!)。トップ10には他にもANAやJAL、東西JRがランキング入りするなど、公務員とインフラ系が上位を固めるディフェンシブな様相となっています。

要するに、これから社会に出ていくなら公務員かインフラ系がいい!って考えてる若者が多いってことですね。そういう業界に今から入ってこの先どういう良いことがあるのか筆者にはさっぱり分かりませんけど、とりあえず安定はしているでしょう。そういう意味では彼ら若者が下方リスクに対して敏感になっているのは事実でしょう。

ただし、それを若者の草食化と切って捨てるのはやや早計でしょう。こうした現象の背後には、もっと根深い構造的な問題があるものです。

実は意外と合理的な学生の選択

今から4,50年ほど前、高度成長期と呼ばれる時代がこの国にありました。経済成長率が平均すると年10%近くあり、ちょうど今の中国みたいな時代です。80年代になるとだいぶ落ち着きますが、平成バブル崩壊の90年頃までは基本、成長の時代と言っていいでしょう。

成長の時代では、当たり前ですけどリスクの心配よりもリターンの追求の方が大事です。投資なんてやってないよという人でも自分の人生を“就職”という形で投資したはず。もちろんその投資先は、ボーナスや昇給という形でよりリターンを上乗せされやすい民間企業が中心でした。

筆者も記憶がありますが、90年代に入ってもとにかく官は人気が無くて、防〇大願書取りに行って、でも受験の場所が遠いからどうしようか迷ってたら「朝一でジープ回しましょうか」とか言われるくらい手の込んだサービスしてくれたものですね。

さて、そんな幸運な時代も90年代半ばには終わりました。多くの識者が予測するように、これからの日本はゼロ成長に近く、リターンを継続的に上げるのはなかなか難しい時代となっています。こうなると普通の人材にとってはリスク回避の方が重要なわけです。

大企業に入ってもリストラされたり倒産したり外資に買収されたりする時代。ばりばり滅私奉公させられても、課長ポストすら過半数の人間が貰えない時代……
そういう諸々のリスクを考慮すると、相対的にそうしたリスクの少ない官やインフラ系に目が向くのは、筆者はある意味、合理的で堅実だと思います。「若いうちはもっとリスク取って勝負しろ!」みたいな人もいますけど、そういう会社って新卒カード使わないと入れませんしね。

というわけで、昭和の大先輩方と現在の学生の皆さん、一見すると真逆の志向に見えるかもしれませんけど、変わったのは環境的な部分であって「空気を読む」という性質はまったく変わってないだろうというのが筆者の意見です。たぶん50年ほど昔から団塊世代をタイムマシンで現在に連れてきて就活させても、さっさと公務員とかJRあたりに就職するでしょう。

なんて書くと「いやいや、ワシはいまどきの新人ちゃんみたいなヘタレじゃないぞ!」って思う人も多いでしょうね。でも筆者は仕事柄、普段は数多くの「ヘタレではないはずの上の世代の方々」と付き合ってますけど、いやあ、ヘタレだらけですよ(笑)

たとえばこんなオッサン、ちょっと歴史ある組織には掃いて捨てるほどいてますね。

「解雇規制緩和には断固反対」
(意訳)=そんなん導入されたら自分なんて真っ先にクビ切られるじゃん


「ホワイトカラーエグゼンプション導入には断固反対」
(意訳)=成果なんて上げる自信ないからこれまで通り残業代でチビチビ稼がして

政府がアベノミクス第三の矢(労働市場改革等の構造改革)を一向に放てずグダグダ化してるのは、要はいい年こいた大人の過半数がヘタレなので選挙対策上動くに動けないということです。社会経験豊富なはずのオッサン連中が「リスクとったら負けだ、自分だけはなんとか逃げ切りたい」と安全地帯にしがみついている姿を見れば、そりゃ二十歳前後の若造もリスク回避に重きを置くってもんでしょう。




以降、
公務員人気の本当の問題=誰も仕事の中身を想像できていないこと
いかにして肉食系の人材を増やすか




※詳細はメルマガにて(夜間飛行)







Q:「退職理由は詳細に書かないといけないものなんでしょうか?」
→A:「終身雇用当たり前の会社ほど根掘り葉掘り聞きたがります」



Q:「『出来るだけ楽な仕事に就きたい』とほざいている弟をどうしたもんでしょうか?」
→A:「楽な仕事を探すためにこそ、積極的にインターン等に参加すべきです」







雇用ニュースの深層

金銭解決による正社員解雇制度は不可欠


移民に対するスタンスとしては、彼らが新たな労働市場の担い手になってくれるという楽観派と、彼らがそのまま現在の労働市場の周辺部に固定化されてしまうという悲観派がいます。



露骨に野党共闘路線にクギを差し始めた連合

ぶっちゃけて言うと連合のスタンスというのは経団連-自民党ラインと大きくは変わらないわけで、大企業優遇見直しだの過激な格差是正策などやられると迷惑なわけです。



他。




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就活に関する覚書

昨日、フジのバイキングにちょこっとだけ出演して就活について話したのだが断片的だったと思うので、事前アンケートへの回答をベースにメモしておこうと思う。

1.“オワハラ”についてどう思うか?
 (オワハラとは、「絶対に弊社に入ると約束してください。そうしないと、内定を出しません」と、就活自体を終わらせる会社側の行為)


企業側は内定取り消しが原則不可能なのに対し、学生側はいつでも自由に辞退可能なので、企業としては何らかの形で縛りをかけるしかない。「絶対御社に入社します」と言いつつ年が明けたら音信不通だと仕事にならない。就職先として圧倒的なブランド力のある企業ならともかく、普通の企業ならやっていない会社はない。

逆に「学生の側も内定承諾後は辞退不可能」とすればオワハラなんてすぐに消えるし恐らく内定式も無くなる。

ただ、そうなると恐らくほとんどの学生は「貴重な一回限りの新卒カードを、採用基準や入社後のキャリアパスが曖昧な状態でいきなりは捨てられない」と思うはず。というわけで、現行の新卒一括採用が続く以上、採用活動というのはなんとなくグダグダ長期化し、“オワハラ”も必要悪として存在し続けるだろう。


2.就職のことを考え、「とりあえず大学には行っておけ」と子供にアドバイスする親はどう思うか

「とりあえず大学に行く」レベルの動機なら、MARCH以上(明治、青学、立教、中央、法政)なら行くメリットはある。が、それ以下なら大企業からは大卒とは見なされない可能性が高いので4年間と学費払ってまでいく意味はあまりない。

※ただし近畿大に行ってマグロ養殖やりたいとか国士館行って警察官になりたい等、明確な動機がある場合は別

3.SNSのプライヴェート書き込みを企業がチェックすることはどう思うか

あまり聞いたことが無いが、採用規模の小さな企業ならありえるかもしれない。ただ、飲酒運転したとかホームレスに石投げたといったアウトローな内容でなければ基本的に心配しなくていい。

4.リクルートスーツ着用の是非についてどう思うか

これは賛否両論がある。筆者はいらない派だが、「重要なビジネスの交渉に際して一般儀礼的な着こなしも出来ない時点で人材的には論外」という経営者、人事担当も多い。

ただ、ちょっと学生は過剰に意識しすぎで、もう少し個性を出してもいいと思う。普通のビジネスマンが来ているレベルのスーツやシャツ、タイなら合否にはマイナスしないはず。逆にそんなみみっちいことでごちゃごちゃいうような会社には入ってもロクなことがないので無視してよい。

5.六月面接解禁ルールが形骸化していることについてはどう思うか

経団連傘下企業以外はいつから始めてもよいので、対抗上フライングせざるをえない。就活開始時期は実はあまり重要ではなく、具体的なキャリアの内容や内定後の雇用契約の扱いをクリアにした方が、ずっと双方の負担は少なくなる。










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著作
「10年後失業」に備えるためにいま読んでおきたい話


それゆけ!連合ユニオンズ[上]


若者を殺すのは誰か?


7割は課長にさえなれません


世代間格差ってなんだ


たった1%の賃下げが99%を幸せにする


3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代


若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
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城繁幸
コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
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