今週のメルマガの前半部の紹介です。
先日、世耕経産相がNHKのインタビューで「新卒一括採用の見直し」に言及し、大きな話題となりました。みんな大好き学歴に関係するテーマだし、誰しも経験する話なので議論が百出しているようです。

参考:新卒一括採用の見直しを支持します

とはいえなまじ経験している分、全体像が見えづらくなっている議論が多い気もしますね。部分的に切り取ってみると白でも、離れて見れば黒だったりするのはよくある話。というわけで、今回は新卒一括採用と社会の全体像について広くまとめてみたいと思います。

新卒一括採用メリット・デメリット一覧

新卒一括採用というのは、時期的にも処遇的にも“一括で”どかっと採用してしまうことを言います。時期はだいぶ第二新卒とか既卒者エントリーといったルートを認める企業も出てきてそれなりに一括感は薄れていますが、処遇的にはまだまだ初任給というゼロからのスタートが主流ですね。

企業からすると、新卒一括採用にはこんなメリットとデメリットがあります。
【メリット 1】低コストで大量に採用できる
【デメリット1】多様な人材が採れない、即戦力がぜんぜん期待できない


いちいち誰にどういう仕事を任せるかなんて考えずにポテンシャルありそうな人間をサクサク採用できるので、採る側からするとこんなに楽ちんな手法はありません。中途採用を100人採るとなると(配属約束付き、個別の処遇設定が必須のため)担当者は10人いても過労死寸前になると思いますが、新卒100人なら2、3人いれば回せます。また人事部がまとめて採用するので人材レベルも揃えられます。

一方、そういう路線の結果として、面接会場は無個性のリクスー来た男女であふれ、内定式は22歳前後の男子で固まってしまうわけです。しかもポテンシャル採用なので、彼らはゼロから育てねばなりません。

さて、学生から見ればどうでしょうか。
【メリット 2】新卒カードで楽に就活できる
【デメリット2】採用基準が曖昧、横並び処遇、キャリアパスが見えづらい


企業が楽に採用できるということは、裏を返せば学生も楽に就職できるということです。4年間ぶらぶらしててバイトのリーダー経験くらいしか語れる内容のない人材でも、ポテンシャルさえあればそうそうたるグローバル企業から内定をもらえる可能性があるわけです。

ただし、楽に就職できるということは、さらに裏を返せば会社に下駄を完全に預けてしまうということでもあります。東大出てようが京大出てようが初任給はみんなと一緒、何の仕事をやらされるのかは入社して配属されるまでは分からないし、その後も辞令一枚で右から左へ動かされる総合職身分です。

はっきりいって10年後のキャリアなんて誰にもわかりません。「大企業の正社員になる」というのが人生の目標な人はそれでいいかもしれませんが、多少なりともビジョンがあったり人より頑張って自己投資してきた人にとってはさぞ物足りないことでしょう。

では、学生を送りだす大学にとって、新卒一括採用にはどんなメリットデメリットがあるんでしょうか。
【メリット 3】箸にも棒にもかからないような学生でも引き取って育ててくれる
【デメリット3】学生が勉強せず、企業からは「日本の大学は使えない」とバカにされる

課題を出すと平気でネットからコピペしてきたり、テストの度に日本語にすらなってないようなゴミ論文を大量に量産する等、入試時が能力ピークという学生を多く抱える大学にとっては、そんなのでもポテンシャルさえあれば引き取って65歳まで面倒みてくれる新卒一括採用は非常にありがたいシステムです。逆にいえば、企業がそういう人材をちゃんと大卒として引き取ってくれるからこそ、そうした大学は高等教育機関の体面を維持できているわけです。そういう大学の関係者は新卒一括採用に感謝してもしたりないはず。

ただし、ポテンシャルに軸足を置くということは、裏を返せば大学教育自体には誰も期待していないということでもあります。そういう環境だと普通の学生はあんまり勉強しないし、企業も大学なんて舐めくさります。授業のある平日に普通に面接やったり内定式ぶつけたりもします。で、その辺を突っ込まれると「日本の大学はレベルが低いからだ」と開き直ることになります。

茂木さんは非常に優秀なので、おそらく上記のメリット面を意識する機会と無縁な半面、デメリット1、2番あたりを強く感じているんだと思われます。

大学関係者は人によりますね。「うちのバカ学生にポテンシャル以外に評価できるものなんてないよ」というセンセイがたはメリット3重視でしょうが、ゼミ生の半分くらいが外資や海外で就職するような教授だと「いまどき新卒一括採用なんてやってるような企業には行くな」と明言する人も珍しくありません。

とまあこんな具合に、新卒一括採用がどういう風に見えているかは人によって大きく違っているというのが実情でしょう。これが議論百出の背景です。



以降、
でも社会全体を見れば、もはや新卒一括採用は維持できない
そもそもポテンシャル採用なら大学なんて必要ない
世耕大臣はなぜわざわざ「新卒一括採用の見直し」に言及したのか




※詳細はメルマガにて(夜間飛行)







Q:「新卒者は研修で基礎を重点的に教えるべき?」
→A:「コースを分けて追跡調査などするのがお勧めです」



Q:「日本企業で真のイノベーションを起こすには?」
→A:「やってみないことにはわかりませんが……」






雇用ニュースの深層

50代で異業種転職しても評価される人

20代のころは誰でも新しいものに積極的に挑戦し、情報をアップデートし、自分で課題を見つけようとする姿勢を持っていたはず。それを45歳以降も維持できるかが命運をわけることになります。



日本人が給料より休みを欲しがるワケ

「給料が減ってもいいから労働時間を減らしたい」と回答する人間が諸外国と比較して多いという点に、筆者はとても危険な兆候を感じています。

他。





Q&Aも受付中、登録は以下から。

・夜間飛行(金曜配信予定)





スポンサーリンク